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たしろや-田代光男

阿蘇神社は傷ついた。見るたびに胸が痛む。



阿蘇神社の横参道のすぐそばに、親しみやすい暖簾の店がある。
お好み焼きもやっているが、メインは回転饅頭だ。関東では今川焼き、ところによっては大判焼きなどとも呼ばれる、あのほかほかの逸品である。
店主の田代光男さんは二代目だ。兵庫県で食品企業に勤めていたが、三十五歳のとき故郷の阿蘇に戻り、伯母の跡を継ぐことになる。
そろそろ古稀に手が届く年齢とはとうてい見えない頑健ぶり、サラリーマン時代には柔道に精を出していた。
そういえば回転饅頭を焼く真っ白い仕事着はどこか柔道着に似ている。
自慢は素材だ。皮の小麦粉をはじめ、黒餡の小豆、白餡に使う白インゲンの一種大手亡豆、すべて北海道から取り寄せたもの。
「昔から、農家の人びとが作業の合間にほっと一息ついてエネルギーを補給するのに食べたものだから……」、親しみやすさ、変わらぬ味わいを大切にする。
熊本地震で目の前の阿蘇神社は傷ついた。見るたびに胸が痛む。
あの地震の直後、ガスが使えたからすぐに饅頭を焼いた。地元の人びとに配ろうと決めたからだ。
ところがどんどん客が訪れ、激励の差し入れのために大量に買っていく。
配る分まで回らなかった。ともあれ、つらいときに少しでも役に立ったということ。それがうれしかった。


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カテゴリ : 行政
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