ホーム > 周年放牧

周年放牧

概要

平成2年の牛肉輸入自由化以来、国内では子牛価格の低迷が長期化しました。また、生産農家の高齢化もますます深刻化し、全国的に農家の"牛離れ減少"が相次ぎました。
阿蘇での畜産の優位性は、何よりも広大な草原を利用した放牧によって省力・低コスト化が図れることでした。しかし、効率的に生産された輸入牛肉は、それを下回る低コストで肥育され、安い価格で市場に並ぶ。これにより、長年にわたって維持されてきた阿蘇の畜産業の優位性はまたたく間に崩壊したのでした。
しかし、阿蘇の畜産農家も手をこまねいていたのではありません。将来への不安を抱きつつも新しい経営の道を求めて、熊本県畜産試験場阿蘇支場を中心に研究を繰り返してきました。こうした中から考え出された方法の1つが「周年放牧」でした。
周年放牧は1年を通して牛馬を放牧場で飼育する方式で、農家にとっては畜舎飼育の手間がまったく不要になります。既に全国いくつかの有名な放牧地帯で導入されており、コストの低減に着実な成果を上げています。
牧場が省力化につながる大きな理由は、飼育者の飼料運搬や糞尿処理の手間が省けることにあります。また、畜舎や機械への投資も削減できます。
それが、周年放牧方式になれば、さらにコスト低減が可能となります。

じいさん技術

阿蘇における本格的な周年放牧試験は昭和50年から55年にかけ、旧阿蘇町の熊本県畜産試験場阿蘇支場(現草地研究所)で実施されました。研究対象は繁殖牛100頭。極めて実証的な手法が用いられ、その成果は国の研究管理官から高い評価を受けました。しかし当時はまだ、畜産農家を取り巻く環境はさほど厳しくなく周年放牧はなかなか普及しませんでした。雪の中で生きる牛群を見て、「牛がかわいそう」と嘆いた視察者(農家)の声に代表されるように、農家自身も迫り来る外圧を察知していませんでした。
それから15年、この極めて省力的な周年放牧がやっと注目を浴びる様になりました。農家の急激な高齢化も影響し、手間とコストの少ない飼育方法が必要とされ始めたのである。高齢者でも比較的容易にできるため、俗に「じいさん技術」と比喩されますが、現在は阿蘇郡市内の11の畜産団地で導入され、今後の経営の切り札として期待されています。

周年放牧と生産コスト

1年間、畜舎で繁殖牛1頭を飼育するには、通常約140時間もの労働が必要になるとされています。しかし、阿蘇の慣行的な夏山冬里の飼育方法では年間70時間で済みます。
周年放牧方式を導入すると、さらに省力化が推進され、年間50時間以下というデータもあります。ちなみに、現在の阿蘇での子牛1頭の生産コストは約14万円(労働費含まず)で、これは県内最低の水準です
全国的には石垣島でのローズグラスを使った周年放牧が、子牛1頭9万円台という最低生産コストの記録を持っています。

暖房タンク

一の宮町の木落牧野組合では、平成8年から12戸の有畜農家で60頭の繁殖牛を周年放牧に移行し、南小国町からの預託放牧も受け入れました。ちょうどその年の冬、例年にない異常寒波が押し寄せ、飼育者が心配して放牧場を見に行くと、牛はまったく平然としていました。牛が寒さに強い理由は、その内臓にあります。ドラム缶約1本分の容量がある牛の第1胃は、発酵タンクの役割を果たし、そこで発酵した熱で牛は体温を保つことができます。

画像

参考映像


カテゴリ : 生活
索引 :

このページのURL:

TOP