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地下水

概要

熊本県は昭和60年に環境庁が選定した全国の名水百選に、県内から全国一の4カ所が選ばれるなど、水に恵まれているところです。
このうち3箇所は阿蘇火山の周辺に分布し、これらの豊かな名水はまさしく阿蘇によって育まれたと言ってもよいでしょう。
阿蘇によって育まれた地下水は、どのようにして生み出されたものでしょうか?

阿蘇周辺はなぜ地下水が豊富なのか?

九州の中央部に位置する阿蘇火山は、陥没カルデラとしては世界有数の規模を誇り、東西18Km、南北25Kmという巨大なカルデラを持つことと、その形成にともない大量に噴出し、周辺一帯に暑く堆積している火砕流堆積物の存在で特徴づけらます。この火砕流堆積物は、噴出時期によって古い順にAso-1,Aso-2,Aso-3,Aso-4の4つに区分されますが、しばしば高温で粘性を持った軽石、スコリア、ガラス火山灰等がくっつき合ってできた溶血擬灰石となっています。
また、この火砕流堆積物の各層の間は、粘土化して難透水性の火山灰層等で仕切られていることが多くなっています。そして溶結凝灰岩の一枚の厚さは数十メートル以上にも達し岩石そのものは堅硬、緻密ですが宮崎県の高千穂渓谷等の柱状節理に見られるように、往々にして縦クラック(ひび割れ)がはいり、これが水道となって地下水を貯留し、阿蘇カルデラ周辺では有能な帯水層を形成しています。
一方、外輪山火砕流活動の以前からあった古い火山群で、先阿蘇火山岩類と呼ばれる岩石からなリます。
このカルデラ盆の底は火山灰混じりの砂礫、粘土、シルト等からなり一部中央火口丘から流出した溶岩流を挟んでいます。
また阿蘇谷での深層ボーリングでは深さ482メートルで花崗岩に着岩しますが、その他変成岩や中、古生代の堆積岩がカルデラ底の数百メートル以深に分布するなど基盤岩はかなり深くなっており、地下水盆を形成しています。
この広大な阿蘇カルデラ外輪山の西麓に連なる地域にも、新規の火山灰土(赤ボク、黒ボク)に覆われて阿蘇火山流堆積物が厚く堆積している大規模な地下水盆が形成されており、まさしく阿蘇によって抱かれていると言ってもよいかもしれません。

降水量

阿蘇は日本でも有数の多雨地域で、阿蘇山上では年降水量が3,200㍉以上に達します。
また、阿蘇谷、南郷谷等の低地部や北外輪の南小国等でも、500㍉以上の降水があります。さらに熊本市(地方気象台)でもおよそ2,000㍉の年降水量があるなど、全国平均の1,749㍉と比較してもかなり大量の降水がある地域となっています。
これらの降水の一部は大気中に蒸発したり河川水として海へ流出しますが、その残りは地下浸透し、地下水としてかん養されることとなります。
このことがまた、阿蘇の周辺に地下水や湧水が豊富な一つの要因と考えられます。
この地域の地下水については、今まで行政や大学等の研究機関によって各種の調査研究が進められ、その実態も明らかになりつつあります。

阿蘇周辺の年降水量(平均値)単位:mm

観測地点名降水量観測地点名降水量
阿蘇乙姫2831.6南小国町2388.7
阿蘇山3206.2高森2408.1
熊本市1985.8全国平均1,718

阿蘇市乙姫の年間降水量

熊本地域の地下水

熊本地域は阿蘇外輪の西麓台地から熊本平野にかけての地域で、熊本市とその周辺の15市町村の範囲からなります。
この地域の水分地質は、地下水の入れ物である地下水盆を形造る「変成岩類」、「御船層群」、「先阿蘇火山岩類」等の基盤岩類と、その中の地下水を含む地層である帯水層とに分けられます。
この基盤岩類は、阿蘇西外輪山から右回りに益城、御船山地、雁回山、宇土半島、金峯山塊へと菊池台地から熊本平野にかけての地域をぐるりと取り囲む山地と、託麻台地の小山山、戸島山から北西方向に植木の岩野山にかけての小さな孤立丘がこれに当たります。この大きな地下水盆の中に小さい凹地(小地下水盆)がありますが、植木台地、白川中流域、木山川筋に明瞭なその存在が明らかになっています。
地下水が含まれる主要な帯水層は、おもに菊池台地、植木台地、託麻台地等から熊本平野の地域に分布しています。「阿蘇火砕流堆積物」、「硯川溶岩層」、「未区分洪積層」、「島原海湾層」等である。また台地の上に比較的薄く分布する「段丘堆積層」も、浅層の主要な帯水層となっています。

湧水量

熊本地域には、水前寺・江津湖(熊本市)や浮島(嘉島町)に代表されるような大きな湧水が多数存在します。県と熊本県が、昭和59年10月と60年5月に実施した湧水量観測調査で、この地域の湧水の実態も初めて明らかにされました。
調査によると水前寺・江津湖周辺の湧水量の合計は、10月の高水位期では7.22㌧/秒、低水位期の5月では4.46㌧/秒と観察され、年間湧水量の合計は1億9,400㌧と推計されます。
この湧水機構としては、台地末端の段丘崖の砂礫層からの浅層の湧水とともに、深層の硯川溶岩の亀裂中からの地下水が湧出するものと考えられます。また、浮島・下六嘉等の矢形川周辺でも大量の湧水が見られ、高水位期、低水位期それぞれ7.32㌧/秒、5.55㌧/秒と観測され、年間湧水量も2億3,900㌧と推計されます。

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