ホーム > 天狗孫兵衛(てんぐまごべえ)

天狗孫兵衛(てんぐまごべえ)

 孫兵衛ちゅう男が中岳(なかだけ)麓(ふもと)の扇谷(おうぎだに)まじ、たきもん取りに行ったときのこったい。孫兵衛は身軽な男で、岩から岩へひょいひょいと飛び渡りながら、山道ば登って行かした。扇谷にゃ昔から天狗(てんぐ)が住んどって、そん様子ば上ん方から見とらしたったい。天狗は

“おれんごつ、身軽な男のおるこたあおるばい。”

そげん思ううち、声かけらした。

「おいおい、お前は人間だろ。そぎゃん身の軽かもんな見たこつのなか。」

 天狗はえろう感心して、孫兵衛と友達になったげなたい。ある日んこつ、孫兵衛は葬式(そうしき)の揚(あ)げ豆腐(どうふ)ば買いに出かけたそうな。帰り道に仲良しになった天狗にばったり出会うたったい。

「今なあ、江戸(えど)じゃあ大火事の起こっとる。火事と喧嘩(けんか)は江戸の華ちゅう言葉もあるじゃろうが。ちょい

と見とくとも、後学(こうがく)のためち思うばってん、どぎゃんな。あんたも一緒に行ってみんかい。」

 天狗に誘われち、孫兵衛もその気になったもんで、買うたばかりん揚げ豆腐ば、松の枝にちょいと引っかけて天狗の背中にからわれたそうな。天狗ちゅうのは神通力(じんずうりき)を持っとるんで、江戸までひとっ飛び、飛んでいってしもうた。

 揚げ豆腐買いに行った孫兵衛が、いつまでも帰って来んもんだけん、皆いらいらしとった所に、澄(す)まし顔で孫兵衛が戻って来て

「江戸の火事はすごかばい。ちょいと今、見てきたばってん、あん火の具合じゃ、まだ一時ゃ治まらんばい。」

「何ば寝ごつば言うとるかい。ふざけとる場合じゃなかじゃろが。」

 村んもん達がそげん言うと

「ほんな話したい。江戸じゃ隣のおっさんに出会うたばい。」

 孫兵衛の言うごつ、何か月かして隣のおっさんが帰ってきて、江戸で孫兵衛に会うたこつば話したもんで、村んもんたちゃ「天狗孫兵衛」てち呼ぶごつなったちゅう話たい。

参考

くらしのあゆみ 阿蘇 -阿蘇市伝統文化資料集-


カテゴリ : 文化・歴史
索引 :

このページのURL:

TOP