ホーム > 彦しゃんの傘
彦しゃんの傘
更新日: 2013-08-14 (水) 15:36:53 (3902d)
民話
彦しゃんの傘
彦しゃん(彦一)が、
「あたしゃ、すばらしい傘ば持っとる」
ち
「天気のええ時や独りでにこうつぼまる、天気の悪い時や独りでにこぅやってパーツと開く。そういう傘を持っとるです。」
そればあつちこつち言いふらしたもんだけん、マツイの殿さんな、
「そぐあん珍しか傘があんなら、いっちょうわけちもらおう」
ち。
で、彦一つあんをお城に呼んで、
「ああた、えらいその素晴らしい良か傘を持っとるちゆうね。
天気の良か時やつぼまる。雨が降る時や独りでに開く」ち。
それから、
「はい、その傘はああた、生きとるけん、もう必ず天気の良けりや独りでに、パッとこうすぼまりますたい。」
「そぎやん素晴らしか傘があんなら、俺いっちょわけちくれい」ち。
「はい、そらうんと金ば貰うなら、わけてあげてんよございます。」
それから殿さんが、「んなら、いっちょ。」
何両か金ばそのやって、してそれば傘ば置いた。
ところが、殿さんがこうつと見とるばってん、雨降ったちや、天気が良かったちや、こうそのつぼまりやせん。
それから彦しゃんば呼んで、
「あクや普通ん傘じゃったぞ。天気が良かったちや、雨降ったちや、いつも靡きもつぼみもせん。」
「あらら、そりや、あん傘は生きとるとば、何んにも食べささだったな。
とぅとうあげえ、傘死んでしもうた。可哀想なことをしたち」
ち言うたそうな。(五六五 生き絵)
参考
くらしのあゆみ 一の宮 -一の宮町 伝統文化研究会-
一の宮町宮地 岩永 寿(出典:関西外国語大学 三原研究室 阿蘇山麓の口承説話より)
索引 : ひ
このページのURL: