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灰噴火

概要

阿蘇中岳の噴火では、赤熱噴石を間欠的に吹き飛ばすストロンボリ式噴火の画像がよく紹介されます。しかし、このような噴火はさほど多くなく、むしろ地元で「ヨナ」と呼ばれる大量の火山灰を噴出する噴火の方が多いのが特徴です。中岳は、活動が活発な時期に灰黒色の噴煙を盛んに噴き上げ、噴煙からは火山灰が降り注ぎます。中岳のマグマはSiO2含有量が54%程度の玄武岩質安山岩で、最近噴出されたスコリアも化学組成はほとんど変化していません。過去1万5千年間の堆積物も大部分は火山灰であり、中岳の噴火の特徴となっています。
活動中の火山灰は、マグマから由来する結晶を含んだガラス片と変質した岩片から構成されます。量的には前者が圧倒的に多い。後者は、火口底や火道の壁を構成していた岩石で、新たに火孔ができる場合や火道が拡大するなどの特別な時期以外は少ない。顕微鏡で見ると、マグマから由来する灰を構成する粒子にはガラス片(石基部分を含む破片)とマグマから遊離した結晶片があります。ガラス片は、平面に囲まれた「多面体型」と球形や毛状に伸びたものやスコリアの不定形破片などからなり「しぶき型」に分けられます。量的にも最も多いのは多面体型ですが、火山活動がさらに活発になると、しぶき型も混入して放出されます。しぶき型の粒子が液体マグマに由来する火山灰であることは明らかです。活動が活発で赤熱した火山灰やスコリアを噴出している時期には、稀に「ペレーの毛」や「ペレーの涙」状のガラス玉が認められます。多面体型の粒子には、表面に気泡の跡が認められる場合があります。内部は透明な褐色のガラスであったり、その中に微小な結晶ができることもあります。また、全体が結晶で占められ黒色で不透明な粒子になっているものもあります。
中岳でしばしば観察される「火山灰の噴出を主とする噴火」はこれまでほとんど注目されず、従来の火山の噴火様式に当てはまらないものでした。しかし、安山岩質の火山ではかなり一般的です。同時に大量に生産されるガラス質の火山灰は、マグマの噴出率が比較的小さな場合に、上昇中のマグマの最上部が冷やされてガラス質になったものが破砕されて生じたものです。
変質した岩石を含む火山灰は、全体的に白くなります。これは、白っぽく変質していた岩石の粒子が混じるためです。
平成元年(1989)10月20日~21日に放出された火山灰がその典型的な例でした。この時の火山灰には、硬石膏、明礬石(みょうばんせき)が含まれていたことが確認されています。変質岩片を含む濡れた火山灰は乾燥するとセメントのように固まるがその原因はこれらの変質鉱物の存在によるためと考えられます。

参考

阿蘇火山の生い立ち

カテゴリ : 阿蘇の自然
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