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野焼きと暮らし

概要

草原は、阿蘇の農業や暮らしの営みのなかにガッチリと組み込まれ、欠かすことの出来ない重要な役割を果たしてきました。そこで育ったススキやネザサ、トダシバなどは牛馬の飼料(生産資材)となり、これらを畜舎の敷料として厩肥(有機肥料)を得ます。さらに、昔は茅葺き屋根の材料として、あるいは薪を得る貴重な場所としても活用されてきました。
しかし草原は、自然のままに放任しておくと、次第に森林に覆われてしまいます。火山灰土壌の阿蘇の植生から考えると、「豊かな自然の草原」というのは現実には存在することができません。
そこで、人々はこの自然本来の遷移(せんい)を、野焼きによって食い止め続けてきました。例え危険が伴っても、野焼きを行なわないと農業は守れません。自分たちが生きていくための糧が得られませんでした。
野焼きの効果について、昭和4年に発行された『阿蘇郡畜産組合三十年小史』(阿蘇郡畜産組合発行)に、野焼きの効果についての記録が残されています。


『原野火入れは原野維持及害虫駆除最も必要にして、火入れ防止せんか、前年の枯草の為め草立不良と成るのみならず害虫生存し、翌年放牧期間牛馬に寄生し吸血するに依り牛馬の栄養を著しく害し、壁蝨(ダニ)熱流行旺盛となり、畜産界に大なる打撃を与うべし』『原野の灯入れに依り土砂崩壊するの説をなすものあれども各町村に就き調査せる所に依れば、火入れに依り崩壊を助長させる事例なし』


これによれば、野焼きすることで草原の害虫が駆除され、健全な放牧を維持するには絶対不可欠であると、毎年の野焼きを推進していることがうかがえます。
しかし、現実には前年の枯れ草が新しい草に混じると、刈り取りの邪魔になるので焼いて取り除きます。第二に、草原から森林への遷移の第一歩となるアキグミやサルトリイバラノイバラなどの低木を火で抑制し、成長が早くて牛馬の嗜好性が高いネザサ・ススキ・トダシバなどイネ科植物の比率を高め、安定した草原を維持することが主な目的とされています。
野焼きは枯れ草を効率的に焼却除去し、併せて火に弱い低木類の侵入拡大を防ぎ、地下茎が発達して火に強い草を選択的に残す作業であり、省力的かつ効果的な草地管理技術でもあります。
野焼きの頃の平均気温は摂氏5度程度で、ダニはまだ地下に潜んでおり、野焼きによるわずかな温度の上昇ぐらいでは、殺虫効果はあまり期待できないとされています。

カテゴリ : 生活
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