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馬の尻のぞき

民話

馬の尻のぞき

 ある村に何さんちゆうたかな、ちょっと名前は忘れたが、ちいっと人間の足らん、馬鹿に近いような、その馬鹿もんがおって、そして

「あんた、うちにゴロゴロしとらんな、今日どま、焚きもんどまあ取りに行って来なはり」

ち、親から言われた。

 「んなら、焚きもん取りに行こう」

ち、一人でどんどんこう山を登って行って、ある程度高い山からふっと谷間を見たところが、一匹の大きな狐が何かこう蕗の葉ぱ取って、体にべたーんべターンとこう付けとる。

「なあにしよるじやろうか」

と見ると、見とる間に次第次第にその狐がきれえなお嬢さんの着物にそれが変わってしもうて、川ん水で顔をこうすると、真っ白な年頃の娘ん姿に、草ば頭にすると黒い髪になって、立派な、見とる間に綺麗なお嬢さんになった。

 そこでそん若者な、

「ははあ、狐奴があやって騙すぱいな。よっし見とれよ。俺が後で付いて行って、丁度騙しとる時い、いっちょとっちめてやろう。」

で、山からこそこそこそこそ降りて、その狐ん後ぽこう降りて、狐はこう蕗の葉ぱ取ると、これがきれえな傘になるで、傘さしてシャナリシヤナリ、シヤナリシャナリ歩いてその谷間を降りて、村んはずれにこう来て、そしてある一軒の家に、

「ごめん下さい。」

中に入って、

「ははあ、ここに行って化かすばいな。」

で、そん若もんな、

「ようし、見てやれ」

と思ちから、どうどこぞ見たっちや暗うして見えん。中が分からん。

そこで唾付けちからこう障子にこうやって穴開けち、こう見たちや中あ暗うして分らん。

ええ、もうさいさい唾あ付けてこうこう動かして、ところがヒヒーンと鳴いた。

ひょつと気付いた時にや、馬ん尻の穴ぼこうゴクゴクやりおったちうゆう話だ。

参考

くらしのあゆみ 一の宮 -一の宮町 伝統文化研究会-
一の宮町宮地 岩永 寿(出典:関西外国語大学 三原研究室 阿蘇山麓の口承説話より)


カテゴリ : 文化・歴史
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