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黒ボク土

概要

カルデラおよび中央火口丘群の周辺には、火山灰を主とする厚い堆積物が分布しています。これらの堆積物は、軽石やスコリアなどの粗い粒子からなる層を除いて、比較的に腐植の集積した火山灰土です。「黒ボク土層」と、その下位の黄褐色を呈する「赤ボク土層」に大別されます。黒ボク土層は、火山噴火に直接由来しない風成層であるとの考えもありますが、この地域の黒ボク土層には明らかに火山噴火起源の火山灰の混入が認められます。
約1万年前以降の火山灰土層はほとんど中岳に由来するが、中央加工丘群の山体部から少し離れると、色調が微妙に異なる黒ボク土層や赤ボク土層の重なりあった堆積物となり、一枚一枚の火砕物としての識別はほとんどできなくなります。火口から近い地点により多くの物質が堆積しており全体としては、色の濃い黒ボク土層より、淡色の黒ボク土層あるいは赤ボク土層の厚さの差が大きくなります。厚さの変わらない層は活動の休止期で、厚さの差が大きい物は、腐植の生産に比べて灰の供給がずっと多くなります。火山活動の盛んな時期だった事を示している、黒ボク土層と赤ボク土層の間の色調の変化は、火山灰の供給と腐植の生産との割合が時間によって徐々に変化したことを意味しています。
また、黒ボク土層の基底は完新世(約1万年前以降)の始まりと一致するという考えもありますが、阿蘇カルデラの西側では、墳出現から20㎞以上離れた地域において、中央火口丘群噴出の火山灰層の厚さは急速に薄くなり、約2万5千年前の姶良火山灰は地表から連続した黒ボク土層の中に挟まれています。このことから、カルデラ西側の黒ボク土層の基底の年代は、約3万年前と推定されています。一方、カルデラ付近から東方の地域では、黒ボク土層の中の鬼界アカホヤ火山灰の位置から、基底は約1万年前と推定されます。これらの事実は、黒ボク土層の基底の年代が場合によって異なることを示しています。黒ボク土層は、適当な火山灰の供給があると安定して上方に向かって生産されます。しかし、供給が非常に少ないか、まったくない地域では下方の古い火山灰層にも腐植が集積すると考えられます。
黒ボク土層成因の有力な説として、古代人による「野焼き」説があります。一方、黒ボク土層ができるにはイネ科の植生も必要だと言われています。阿蘇カルデラの内側や東部から波野村付近を調査すると、黒ボク土層に挟まれる赤ボク土層(火山灰)は火山活動の活発な時の堆積物で、火山活動が穏やかな時期が休止期には例外なく広範囲に黒ボク土層が発達しています。このような産状の原因を全て古代人の「野焼き」とするのは不自然です。おそらく、火山活動の活発化で植生が失われて荒廃地が広がり、その後の穏やかな時期か、休止期にはササやカヤなどのイネ科の植物が進入し植生が回復します。このようなことがくり返されたことによって、いくそうにも別れた黒ボク土層が生じたと考えられています。
一方、黒ボク土層が分かれている地域を除くカルデラ周辺では、黒ボク土層は地表からほぼ連続して発達しており、約1万年前より古い部分はほとんど赤ボク土層からなります。このような赤ボク土層の部分については、古い黒ボク土層中の腐植が分解されて脱色した可能性も考えられます

参考

阿蘇火山の生い立ち

カテゴリ : 阿蘇の自然
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