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阿蘇の自然

噴出物

 

概要

噴出物(ふんしゅつぶつ)とは、火山の噴火活動によって地下から地表へ放出される 物質の総称です。気体・液体・固体の三態に分類され、それぞれ火山ガス・溶岩流(ようがんりゅう)・ 火山砕屑物(かざんさいせつぶつ)と呼ばれます。 阿蘇火山は約27万年前から現在にいたるまで多様な噴出物を産出しており、 現在のカルデラ地形・土壌・地下水はいずれもこれら噴出物の積み重なりによって 形成されています。

阿蘇中岳の噴出物の特徴

現在活動中の中岳(なかだけ)第一火口の噴火は、火山灰を大量に噴出する 灰噴火(はいふんか)が特徴です。

通常、偏西(へんせいふう)帯にある日本では噴煙が東に流され、 火山灰の分布も火口の東側に偏ります。しかし阿蘇中岳の火山灰分布は 円形に近い形を示します。これは、中岳灰噴火の噴煙が低いために 偏西ではなく地上の影響を受けるためと考えられています。

火山灰層と黒ボク土(くろぼくど)

最近1万5千年間の堆積物には、腐植(ふしょく)に富む黒ボク土層が挟まれており、 年代測定などによって年代のわかっている層準(そうじゅん)が多数確認されています。

多量の腐植を含む黒ボク土層の存在は、火山活動の長い休止期または静穏期(せいおんき)を 意味します。それらの間に挟まれる火山灰層は、火山活動の活発な時期の堆積物です。 活発な時期の火山灰層は複数の噴火の産物で構成されますが、大きくは一連の活動期として 捉えることができます。

このような考え方と顕著な黒ボク土層の数から、約6,300年前までの中岳の活動の おおよその周期は約500年程度と推定されています。

噴出物の分類

火山噴出物は噴出時の状態によって大きく三つに分類されます。

気体噴出物(火山ガス)

マグマ中の揮発性(きはつせい)成分が地表に放出されたものです。 主成分は水蒸気で、二酸化硫黄(にさんかいおう)・二酸化炭素・塩化水素なども含まれます。 中岳第一火口では非活動期にも火口周辺から噴気が放出され続けています。 詳細は「火山に関する用語」の火山ガスの項を参照してください。

液体噴出物(溶岩流)

地下のマグマが地表に流出したものです。中岳は有史(ゆうし)以降の活動では 溶岩流出の記録はありませんが、過去の地質記録には多くの溶岩流が残されています。 代表的なものに、大峯(おおみね)火砕丘から約9万年前に流出した高遊原(たかゆうばる)溶岩があり、 東西約9km・南北約4kmの溶岩台地を形成しています (産業技術総合研究所地質調査総合センター『阿蘇火山地質図解説』)。

固体噴出物(火山砕屑物)

噴火によって破砕・放出された固体物質の総称で、粒径により以下のように分類されます。

名称 粒径の目安 特徴
火山灰(かざんばい) 2mm以下 広域に降下する細粒物質。阿蘇では「ヨナ」とも呼ばれる
火山礫(かざんれき) 2〜64mm スコリア・軽石(かるいし)を含む
火山岩塊(かざんがんかい) 64mm以上 火口近傍に落下する噴石を含む

スコリアとは多孔質(たこうしつ)で黒〜暗灰色の火山礫で、マグマが急激に発泡・固化したものです。 軽石は白〜淡灰色でより多くの気泡を含み、水に浮くものもあります。 テフラ(降下火砕物(こうかかさいぶつ))については「火山に関する用語」も参照してください。

カルデラを形成した大規模噴出物(Aso-1〜Aso-4)

現在の阿蘇カルデラは、約27万年前から約9万年前にかけて4回の大規模噴火によって 形成されました。各噴火はそれぞれ Aso-1・Aso-2・Aso-3・Aso-4 と呼ばれます 阿蘇火山博物館『阿蘇火山の概要』)。

  • Aso-1:約26.6万年前。噴出量 約32 DRE km³。
  • Aso-2:約14.1万年前。噴出量 約32 DRE km³。
  • Aso-3:約12万年前。
  • Aso-4:約9万年前。最大規模の火砕流(かさいりゅう)を噴出。 カルデラ周囲に広大な火砕流台地を形成。堆積物は九州全域に及ぶ。

Aso-4 の堆積物は溶結凝灰岩(ようけつぎょうかいがん)として九州の台地地形を 広範に形成しており、熊本・大分・宮崎・福岡・佐賀各県で確認されています。

ヨナ——火山灰の地方名

ヨナとは、阿蘇地域で古くから使われてきた火山灰の地方名です。 中岳の噴火にともなう黒色砂状の細粒火山灰を指し、降灰時には農作物・水源・ 交通に影響をもたらします(気象庁『阿蘇山常時観測火山』)。 一方、長年の火山灰堆積は阿蘇の火山灰土壌(黒ボク土)の形成にも寄与しており、 草原・牧草地の基盤を担っています。

よくある質問

Q. 阿蘇中岳の火山灰の分布がほぼ円形なのはなぜですか? A. 通常の火山では偏西の影響で火山灰が東側に偏りますが、 阿蘇中岳灰噴火は噴煙が低いため、偏西より地上の影響を受けます。 そのため火山灰の分布が円形に近くなると考えられています。

Q. 中岳の噴火はどのくらいの周期で起きていますか? A. 黒ボク土層の解析から、約6,300年前までの活動周期はおよそ500年程度と 推定されています。ただしこれはあくまで長期的な目安であり、 現在の活動予測に直接適用できるものではありません。

Q. ヨナとは何ですか? A. 阿蘇地域の方言で火山灰を指す言葉です。 中岳の噴火にともなって降り積もる黒色の細粒火山灰を指します。

Q. Aso-4 の火砕流はどこまで到達しましたか? A. 九州全域に及んだとされ、熊本・大分・宮崎・福岡・佐賀各県で 堆積物が確認されています(産業技術総合研究所地質調査総合センター)。

関連項目

  • 阿蘇火山の生い立ち
  • 火山に関する用語
  • 灰噴火
  • 黒ボク土
  • 阿蘇カルデラ
  • 中岳火口
  • 火砕流
  • テフラ
  • 高遊原台地
  • ヨナ(阿蘇の方言)

参考文献

更新日: 2015-08-26 (水) 00:00:00 (3935d)