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生活

イタチが横切るとき、右から左へ横切る際は何事も災厄が

 

概要

イタチが進行方向に対して右から左へ横切った場合は、その日に災厄が起こらない吉兆とされる。反対に、左から右へ横切った場合は凶兆とされるが、所定の唱えごとを3回繰り返すことで、その日の災難を逃れることができると伝えられている。


唱えごと(呪文)

宮地地区(イタチ・蛇 共通)

いたち道、血道、横道、近い道、我が行く先は、黄金花(こがねばな)咲く

イタチまたは蛇に道を横切られた際に、3度唱える。

北坂梨地区(蛇の場合)

蛇道切り、血道切り、われが切れば、俺も切る

と続けて3度唱え、「アブラモンケンソワカ」と唱える。

アブラモンケンソワカ

「アブラモンケンソワカ」は密教の真言に由来する呪文で、仏教的な呪術観念と土着の民俗信仰が習合した形として残っている。


右から左が「吉」とされる理由

着物の合わせは左側を上にして(左前)着る習慣があり、懐(ふところ)は右手を差し入れる左側にある。このことから、右から左へ動くものは「懐に財が入る」方向として吉とみなされ、金運上昇の兆しと解釈された。イタチの横切る方向への吉凶判断は、この着物文化と結びついたものと考えられている。


イタチの道切りとは

いたちの道切り」とは、イタチが目の前の道を横切ることを指す言葉で、古くから全国的に伝わる俗信である。

イタチには決まった道のみを通る習性があるとされ、その通路が遮断されると二度と同じ道を使わないという観察から、「人と人との交際や音信が絶える」前兆として忌まれるようになった。


全国の類似事例

この俗信は阿蘇地域に限らず、日本各地に広く分布している。国際日本文化研究センター「怪異・妖怪伝承データベース」には以下の記録が残されている。

地域 年代 内容
熊本県 1936年 道を横切られることを「いたち道」といって嫌う。唱えごとを3回するとよい
宮城県 1915年 鼬に道を切られると難にあうといわれる
千葉県 1933年 朝、鼬に道を遮られると不吉で、その日の仕事が不首尾になるという
新潟県 1957年 一人歩きをしていると後からついてくる「送り鼬」の伝承がある
静岡県 1914年 夜道についてくる「送り鼬」に草履を投げるとやむという

阿蘇地域の記録は、唱えごとの文言と地区名が具体的に残されており、全国の類似事例の中でも一次資料に近い形で保存されている点で貴重である。


イタチにまつわる民俗

江戸時代中期の百科辞典『和漢三才図会』には、イタチの群れは火災の前触れ、鳴き声は凶事の前触れと記されている。また、イタチは数百年を経ると魔力を持つ妖怪になるという伝承も各地にあり、「かまいたち」「管狐(くだぎつね)」「イズナ」など、イタチを起源とする怪異譚は多い。

一方で、ネズミなどの害獣を駆除することから「害獣を退治する益獣」として神社・寺院に棲みつくイタチを吉兆とする見方もあり、その評価は時代・地域によって一様ではない。


関連項目

  • 唱えごと
  • 蛇道切り
  • いたちの最後っ屁
  • かまいたち
  • 管狐(くだぎつね)

出典・参考文献

  • くらしのあゆみ 阿蘇 ―阿蘇市伝統文化資料集―
  • 国際日本文化研究センター「怪異・妖怪伝承データベース」
  • 和漢三才図会(江戸時代中期)

関連語句 : 唱えごと

更新日: 2010-04-20 (火) 00:00:00 (5838d)