産山村(うぶやまむら)は、熊本県北東部の阿蘇郡に属する村です。 九州のほぼ中央に位置し、阿蘇外輪山の北東側で大分県と境を接する高原の農山村で、 標高500〜1,050mの草原・山林・湧水に富んだ高原地帯が広がっています。 環境省選定の名水百選「池山水源(いけやますいげん)」をはじめとする豊富な湧水を擁し、 「名水の里」としても広く知られています。
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 〒869-2703 熊本県阿蘇郡産山村山鹿488-3 |
| 座標 | 北緯32°59′30″ 東経130°13′10″ |
| 総面積 | 60.72 km² |
| 人口 | 1,382人(男714・女668、令和2年(2020)国勢調査) |
| 世帯数 | 520世帯 令和2年(2020)国勢調査 |
| 村の花 | ヒゴタイ |
環境
熊本県の最北端に位置し、北・東を大分県に接します。 総面積60.72平方キロメートルのうち約80パーセントを山林と原野が占め、 村域の大部分は阿蘇くじゅう国立公園に含まれています。
阿蘇外輪山と九重(くじゅう)連山・祖母山(そぼさん)系に囲まれた高原盆地状の地形を 玉来川(たまらいがわ)が東西に貫き、大野川(おおのがわ)を経て別府湾へと注ぎます。 阿蘇五岳・九重山・祖母山の三つの日本百名山を同時に望むことができ、 広大な草原景観は世界農業遺産(GIAHS)「阿蘇くじゅうの農業・草原維持システム」 (平成25年(2013)FAO認定)の一部をなしています。
信号機もコンビニエンスストアも存在しない農山村で、 稲作・畜産を核とした集落活動が「里山文化」として今日まで受け継がれています。
地名の由来
産山という地名は、阿蘇の開拓神である健磐龍命(たけいわたつのみこと)にまつわる伝承に由来します。
『くらしのあゆみ 一の宮 ―一の宮町 伝統文化研究会―』によれば、健磐龍命が 阿蘇都媛(あそつひめ)との間にもうけた子がこの地で誕生したことから、 「産山」と呼ばれるようになったと伝えられています。 産山村の公式資料では「命(みこと)を山にたとえ、山が生まれた地」と表現されています。
村内には健磐龍命にまつわる地名が今も残っており、 命が臨時の住まいを設けたとされる乙宮(おとみや)、 産湯(うぶゆ)を沸かした平竈(ひらかまど)から転じた平川(ひらかわ)、 産湯を使ったとされる御湯舟(おゆぶね)、 産湯を汲んだ柄杓(ひしゃく)にちなむ柄杓田(ひしゃくだ)などが語り継がれています (産山村公式サイト「産山村の縁起」)。
沿革
明治21年(1888)4月「町村制」が発布され、阿蘇郡 124ヶ町村にまとまり、 波野郷(はのごう)の12ヶ村は波野村と産山村に分離合併。 本村は産山村・田尻村・山鹿村・大利村・片俣村の5ヶ村が合併し、産山村となる。
平成16〜17年(2004〜2005)の「平成の大合併」においても、 産山村は周辺自治体との合併を選ばず単独村として存続を選択しました。
人口は昭和30年(1955)の3,390人をピークに減少が続き、 令和2年(2020)国勢調査では1,382人(男714・女668)となっています (総務省「国勢調査」、e-Stat)。 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、令和22年(2040)には946人まで 減少する見込みとされています(産山村人口ビジョン、令和2年3月改正)。
産業・暮らし
稲作と畜産を産業の柱とする農山村です。
高冷地の気候と豊富な湧水を活かした棚田米は品質が高く、 農林水産省の「うまい米作り百選」に選定されています。 あか牛の放牧は阿蘇地域共通の伝統で、草原の維持管理にも欠かせない役割を果たしています。 また、全国でも産頭数が約2,000頭とされるブラウンスイス牛の主要産地のひとつで、 その乳製品の生産でも知られています。 クヌギ林での原木椎茸(しいたけ)栽培や高冷地野菜の生産も盛んです。
主な名所・施設
池山水源(いけやますいげん)
昭和60年(1985)に環境省が選定した名水百選の一つです。 湧水量は毎分30トン、水温は年間を通じて恒温13.5℃を保ち、 水質は硬度26mg/Lの中間硬水に分類されます。 一帯は樹齢200年を超える杉の巨木が茂り、池の中央には水神様が祀られています。 湧水は玉来川を経て大野川に合流し、遠く別府湾へと流れ出します。 毎年6月中旬にはホタルが乱舞し、年間約30万人が訪れます (環境省 名水百選データ、2026年閲覧)。
山吹水源(やまぶきすいげん)
熊本県名水百選に選定された水源で、湧水量は毎分30トン以上を誇ります。 原生林に囲まれた水面が木々の緑を鏡のように映す景観が特徴です。 扇棚田(おうぎたなだ)への農業用水は、この山吹水源から約1,300メートルの水路で 直接導水されています。
扇棚田(おうぎたなだ)
標高約820mの高原に広がる棚田で、農林水産省「全国棚田百選」・「うまい米作り百選」および 文化庁の重要文化的景観に選定されています。 扇状の地形を活かして16枚の棚田が等高線状に並び、3本のスギが景観のアクセントをなしています。 晴れた日には阿蘇山・九重山・祖母山の日本百名山三座を一望でき、 田植え期には水面に映る山々の眺めが多くのカメラマンを引き寄せます (熊本県観光サイト「くまもっと」、2026年閲覧)。
ヒゴタイ公園
村の花であるヒゴタイの群生地を中心に整備された山野草公園です。 春はハルリンドウ、夏(8〜9月)はヒゴタイ、秋はコスモスと季節ごとに草原の花が咲き、 公園入口のビジターセンターでは野草に関する解説が提供されています。
乙宮神社(おとみやじんじゃ)
産山地区の産土神(うぶすながみ)が祀られており、阿蘇神社の摂社とされています。 健磐龍命が臨時の住まいを設けたとされる乙宮の地に鎮座し、地名の由来とも深く結びついた社です。
産山温泉 御湯船温泉館
地下約1,000mから汲み上げた源泉100パーセントかけ流しの温泉施設です。 「御湯舟」という地名に健磐龍命の子が産湯を使ったとされる伝承の痕跡が残ります (産山村観光協会、2026年現在)。
よくある質問
Q. 産山村の人口はどのくらいですか?
A. 令和2年(2020)国勢調査では1,382人(男714・女668)です。 国立社会保障・人口問題研究所の推計では、令和22年(2040)に946人まで 減少する見込みとされています(産山村人口ビジョン)。
A. 阿蘇の開拓神・健磐龍命(たけいわたつのみこと)がこの地を訪れた際に子が誕生したことから 「産山」の地名がついたと伝えられています(『くらしのあゆみ 一の宮』)。
Q. 池山水源は環境省の名水百選に選ばれていますか?
A. はい。昭和60年(1985)に選定された名水百選の一つです。 湧水量毎分30トン、恒温13.5℃という豊富な湧水を誇ります(環境省 名水百選データ)。
Q. 産山村へのアクセスはどうなっていますか?
A. JR豊肥本線宮地駅から車で約30分、熊本市から車で約1時間30分、 熊本くまもと空港から約1時間です(産山村観光協会、2026年現在)。
関連項目
- 健磐龍命
- ヒゴタイ
- 草原
- 世界農業遺産
- 地下水
- あか牛
参考文献
- 『くらしのあゆみ 一の宮 ―一の宮町 伝統文化研究会―』
- 産山村公式サイト「産山村について」(https://www.ubuyama-v.jp/、2026年6月閲覧)
- 産山村「産山村人口ビジョン」(令和2年3月13日一部改正)(https://www.ubuyama-v.jp/material/files/group/3/5e5554bacc2cb4109b5a83b918d7b384.pdf)
- 総務省「国勢調査」令和2年(e-Stat 地域統計、https://www.e-stat.go.jp/、2026年6月閲覧)
- 環境省選定 名水百選「池山水源」(https://water-pub.env.go.jp/water-pub/mizu-site/meisui/data/index.asp?info=91、2026年6月閲覧)
- 熊本県観光サイト「もっと、もーっと!くまもっと。」「扇棚田」(https://kumamoto.guide/spots/detail/12481、2026年6月閲覧)
- 産山村観光協会「うぶやま未来ラボ」(https://ubu-lab.com/、2026年6月閲覧)

