概要
ヤマトフキバッタ(Parapodisma setouchiensis Inoue, 1979)は、バッタ目バッタ科フキバッタ(あ)亜科(か)に分類されるバッタです。別名としてセトウチフキバッタ、トガリバネフキバッタとも呼ばれます。後翅(こうし)が退化しているため飛翔(ひしょう)できず、跳躍によって移動する点が大きな特徴です。
形態・特徴
体長はオスが22〜28mm、メスが27〜38mmで、メスの方が大きく成長します。前翅(ぜんし)は短く茶褐色を帯び、後翅は退化しているため飛ぶことができません。体色は緑色を基調としますが、個体や生息環境によって色合いに幅があります。
ミヤマフキバッタ属(Parapodisma)は日本と朝鮮半島に固有の属で、飛翔能力が乏しいために移動範囲が狭く、地域ごとに種分化が進んでいることが知られています。日本国内からは13種程度が記載されており、ヤマトフキバッタはその中でも比較的広い分布域を持つ種です。なお、近畿地方以北の個体群を別種ヤマトフキバッタ(P. yamato Tominaga et Storozhenko, 1996)として区別する見解もありますが、それより西南に分布する集団については従来どおりセトウチフキバッタ P. setouchiensis として扱われています。
生息・分布
国内では本州・四国・九州に分布し、林縁のやや薄暗い環境の下草や葉上で見られます。成虫は主に夏から秋(7月頃から11月頃まで)にかけて確認され、卵の状態で越冬するとされています。幼虫・成虫ともにフキやクズなど、林縁に生える植物の葉を食べます。
阿蘇との関わり
阿蘇地域には、外輪山や阿蘇五岳山麓の広葉樹林と草原が接する林縁環境が広く分布しており、フキやクズといった食草も豊富に見られます。こうした地形・植生は、ヤマトフキバッタをはじめとするフキバッタ亜科の生息に適した環境と考えられます。ただし、阿蘇地域における本種を対象とした専門的な生息調査の記録は確認できておらず、具体的な生息密度や分布状況の詳細については、今後の調査が待たれます。
観察ポイント
観察の際は、生息地の植生を踏み荒らさないなど、周辺環境への配慮が必要です。
保全状況
2026年時点で、環境省及び熊本県の「レッドリストくまもと2024」には掲載されておらず、比較的広い分布域を持つ普通種として扱われています。一方、同じミヤマフキバッタ属には分布域が限定される種も多く、近縁種の中には保全上の配慮が必要とされるものも存在します。
よくある質問
Q. ヤマトフキバッタは飛べますか? A. いいえ。後翅が退化しているため飛ぶことができません。跳躍によって移動します。
Q. いつ頃見られますか? A. 成虫は主に夏から秋(7月頃から11月頃まで)に見られ、卵の状態で冬を越すとされています。
Q. 何を食べますか? A. フキやクズなど、林縁に生える植物の葉を食べます。
参考文献
- 「ヤマトフキバッタ」昆虫エクスプローラ(insects.jp)
- 「ヤマトフキバッタ」虫ナビ(mushinavi.com)
- 「フキバッタ」Wikipedia日本語版
- Otte, D., Cigliano, M. M., Braun, H., Eades, D. C. (2021)「Parapodisma setouchiensis Inoue, 1979」Orthoptera Species File Online, Version 5.0
- 熊本県「レッドリストくまもと2024-熊本県の絶滅のおそれのある野生動植物-」(令和6年10月)