概要

カラスウリ(からすうり)(烏瓜、学名:Trichosanthes cucumeroides)とは、ウリ科カラスウリ属のつる性多年草です。夏の夜にレース状の白い花を咲かせ、秋には朱色に熟す卵形の果実をつけることで知られています。阿蘇地域でも里山の林縁や藪(やぶ)でごく普通に見られる植物です。
形態・特徴
葉は直径約10cmの卵形からハート形で、3〜5浅裂します。葉の両面とつるには粗い毛が密生しており、光沢がなくざらついた手触りが特徴です。地下には大きな塊根(かいこん)を持ち、地上部は冬に枯れても塊根で越冬する多年草です。
花期は7〜9月で、日没後に開花し、翌朝の日の出前には萎(しぼ)んでしまう一日花です。花冠は白色で5裂し、裂片の縁がさらに糸状に細かく裂けてレース状に広がります。この特徴的な形は、花粉を運ぶ夜行性のスズメガ(大型のガの一種)を誘い込むためと考えられており、カラスウリの花筒は長く、長い口吻(こうふん)を持つスズメガでなければ蜜に届かない構造になっています。
雌雄異株(しゆういしゅ)で、雄株には数輪がまとまって咲く雄花が、雌株には単独で咲く雌花がつきます。果実をつけるのは雌株のみです。果実は長さ5〜7cmの卵形で、はじめは緑色に縦縞が入りますが、10〜11月にかけて朱色に熟し、枯れ始めた雑木林の中でよく目立ちます。種子は独特な形をしており、七福神の大黒天(だいこくてん)の顔や打ち出の小槌(こづち)に見立てられることがあります。
生息・分布
本州(東北地方南部以南)、四国、九州のほか、朝鮮半島や中国にも分布しています。日当たりのよい山野の林縁、藪、里山の道端などに自生し、樹木や竹に巻きひげで絡みつきながら成長します。つるは高さ3〜6mほどまで伸び、9〜10月になると一部のつるの先端が下方に向かい、地中に潜って新たな塊根をつくります。種子と塊根の両方で増えることができるため、身近な場所で旺盛に繁殖する植物です。
阿蘇との関わり
阿蘇地域でも、集落周辺の里山や外輪山(がいりんざん)の裾野に広がる雑木林の林縁で、夏の白い花と秋の朱色の果実を見ることができます。カラスウリは特に阿蘇に固有の植物ではありませんが、野焼き(のやき)や採草によって維持されてきた阿蘇の草原と森林の境界(林縁)に典型的に見られる植生の一員です。地域ごとの具体的な観察記録や群生地については、今後の現地調査による確認が望まれます。
観察ポイント
- 花:8〜9月の日没後から数時間、レース状の白い花が開きます。翌朝には萎むため、観察には夕方から夜にかけての時間帯が適しています。
- 果実:10〜11月、林縁につるから朱色の果実が下がっている様子が見られます。落葉が進む晩秋には特によく目立ちます。
- 注意点:カラスウリは有毒植物とされ、果実には苦みがあり誤食には適しません。観察・採取の際は口に入れないよう注意が必要です。
保全状況
カラスウリは全国的に身近な普通種であり、環境省レッドリストや熊本県版レッドリストの対象種にはなっていません。ただし、里山の管理放棄や開発による林縁環境の変化は、こうした身近な植物の生育環境にも影響を与える可能性があります。
利用(伝承・民間療法)
- 根:生薬名を王瓜根(おうかこん)といい、利尿・解熱・黄疸(おうだん)の民間療法に用いられたと伝えられています。
- 果実:果肉や果汁をしもやけ・あかぎれ・肌荒れに塗る民間療法が各地に伝わっています。
- 種子:王瓜子(おうかし)(王瓜仁とも)と呼ばれ、漢方で用いられたとされます。
- 若葉:茹でて和え物や天ぷらにするなど、食用にした例が伝えられています。
- 天花粉(てんかふん)について:塊根から採れるでんぷんを「天花粉」(天瓜粉とも表記)と呼び、あせも対策の粉として使われてきた歴史があります。ただし、天花粉は本来、同属のキカラスウリ(Trichosanthes kirilowii var. japonica)の根を原料とするのが通説であり、カラスウリの根が同様に使われたとする記述もありますが、両種の混同がある可能性があるため、断定は避けます。
カラスウリには「タマズサ(玉章(たまずさ))」という別名もあります。種子の形が、昔の恋文を細く折りたたんで結んだ「結び文(むすびぶみ)」に似ていることに由来するとされています。名前の由来には、カラスが好んで食べるためとする説、熟した赤い実がカラスの食べ残しのように見えるためとする説、中国から伝わった「唐朱瓜」が転訛したとする説など、複数の説があります。
よくある質問
Q. カラスウリの花はいつ、どのように咲きますか?
A. 7〜9月ごろ、日没後にレース状の白い花を咲かせます。翌朝の日の出前には萎んでしまう一日花です。
Q. カラスウリの実は食べられますか?
A. 果実には苦みがあり、有毒植物ともされるため食用には適しません。若葉を茹でて食用にする例は伝えられています。
Q. カラスウリという名前の由来は何ですか?
A. カラスが好んで食べるためとする説や、熟した果実がカラスの食べ残しに見えるためとする説など、複数の説があり、確定していません。
Q. カラスウリは阿蘇の固有種ですか?
A. いいえ、本州・四国・九州から朝鮮半島・中国にかけて広く分布する植物です。阿蘇地域でも里山の林縁で普通に見られます。
関連項目
- 野焼き
- 外輪山
参考文献
- 米倉浩司・梶田忠(2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス
- 各種植物図鑑・生態解説サイトによる形態・生態記述
- 環境省レッドリスト