概要
おんだ祭りとは、阿蘇神社(あそじんじゃ)と国造神社(くにつくりじんじゃ)で毎年7月に行われる農耕神事で、正式には御田植神幸式(おたうえしんこうしき)といいます。稲の生育期にあたる7月、神々が神輿(みこし)に乗って周辺の青田を巡り、その年の豊作を祈願する祭事です。国造神社では7月26日、阿蘇神社では7月28日に行われます。
阿蘇神社と国造神社を中心に一年を通じて営まれる一連の農耕祭事は「阿蘇の農耕祭事」と総称され、昭和57年(1982)1月14日に国指定重要無形民俗文化財に指定されました(阿蘇市公式サイト)。おんだ祭りは、この「阿蘇の農耕祭事」を構成する祭事の一つに位置づけられています。

由来・起源
おんだ祭りは、阿蘇大明神(あそだいみょうじん)が阿蘇の開拓と農耕の道をひろめた御神徳(ごしんとく)をたたえ、年々の豊作を祈願する神事と伝えられています(阿蘇市公式サイト)。江戸時代の藩政期には、肥後熊本藩主・細川家の名代が参向する唯一の祭りだったとされ、明治以降も阿蘇神社の例祭として継承されています(阿蘇市公式サイト)。
なお、神事そのものの創始年代を明記した文献は今回のリサーチでは確認できておらず、古代からの農耕儀礼が形を変えながら今日まで伝えられてきたものと考えられています。
神事の内容
国造神社の御田祭(7月26日)
国造神社の御田祭(おんだまつり)は、神輿1基、宇奈利(うなり)6名という比較的小規模な構成で行われます。祭りの内容は阿蘇神社のものとほぼ同じで、北外輪山の山裾の杜を背景に執り行われます。地元には「手野(ての)のおんだは夕立おんだ」という言い習わしがあり、この日には夕立が降ることが多いと伝えられています。
阿蘇神社の御田植神幸式(7月28日)
阿蘇神社の御田植神幸式は、阿蘇神社の年中行事の中で最大規模の祭事です。神社に祀られる十二柱の神々(主神は健磐龍命(たけいわたつのみこと))が4基の神輿に乗って行列を構成し、神幸門(みゆきもん)から出発して神社周辺の青田を巡ります。
行列には、道案内役の猿田彦(さるたひこ)を先頭に、神々への貢物を頭上の櫃(ひつ)に載せて運ぶ白装束の宇奈利(うなり)、獅子頭、早乙女(さおとめ)、田楽(でんがく)、田男(たおとこ)・田女(たおんな)・牛頭(うしがしら)などの田植人形、神輿を担ぐ駕輿丁(かよちょう)ら約200名が加わります。行列の道中では御田歌(おんだうた)が歌われます。
行列は途中2ヶ所の御仮屋(おかりや)に立ち寄り、神輿の周りを回りながら御田歌を歌う神事が行われます。ここで神職が神輿の屋根に稲の苗を投げ上げ、参列者もこれに続く「田植式」が行われます。苗が神輿の屋根に多く乗ると、その年は豊作になるといわれています。落ちた苗を自分の田に植えると虫がつかない、神輿の下をくぐると無病息災のご利益があるともいわれ、沿道の人々が神輿にお賽銭をあげたり、下をくぐったりする光景も見られます。行列は夕刻に還御門(かんぎょもん)を経て神社に戻ります。
なお、文化庁の文化財データベースでは、阿蘇神社の当該神事が「御田祭(御田植神事式とも呼ばれる)」の名称でも記録されています(文化遺産オンライン)。

阿蘇の農耕祭事における位置づけ
おんだ祭りは、阿蘇神社・国造神社を中心に年間を通じて営まれる一連の農耕祭事「阿蘇の農耕祭事」の一部です。主な祭事は次のとおりです。
| 時期 | 祭事名 | 主な場所 | 概要 |
|---|---|---|---|
| 旧暦1月13日 | 踏歌節会(とうかのせちえ) | 阿蘇神社 | 御田歌の歌い初め |
| 旧暦1月16日 | 歌い初め | 国造神社 | 御田歌の歌い初め |
| 3月(卯の日を中心とする13日間) | 卯の祭り | 阿蘇神社 | 古代神楽の奏上、田作神事等 |
| 3月28日 | 春祭り | 国造神社 | 予祝の神事 |
| 旧暦4月4日・7月4日 | 風祭(かぜまつり) | 風宮神社(かぜのみやじんじゃ) | 悪風を風穴に封じる神事 |
| 7月26日 | 御田祭(おんだ祭り) | 国造神社 | 神幸行列による御田歌の奉納 |
| 7月28日 | 御田植神幸式(おんだ祭り) | 阿蘇神社 | 神幸行列による御田歌の奉納 |
| 8月6日 | 柄漏流し神事(えもりながししんじ)/眠り流し | 阿蘇神社・国造神社 | 御田歌の歌い納め |
| 8月19日〜10月19日 | 火焚き神事(ひたきしんじ) | 霜神社(しもじんじゃ) | 火焚き乙女が御神体を温める |
| 9月23日 | 田実祭(たのみさい) | 国造神社 | 収穫感謝 |
| 9月25日 | 田実祭 | 阿蘇神社 | 収穫感謝、流鏑馬(やぶさめ)の奉納 |
これらの祭事が、豊作祈願から収穫感謝、風害・霜害の防除に至るまで四季を通じて一貫して営まれている点は、他地域にはほとんど見られない特色として評価されています(阿蘇市公式サイト)。
現在の状況
平成28年(2016)熊本地震では阿蘇神社の拝殿(はいでん)が倒壊しましたが、その翌年のおんだ祭りも仮拝殿を設けて例年どおり開催されました(日本考古学協会)。国指定重要文化財の楼門(ろうもん)も被災し、7年半に及ぶ災害復旧工事を経て令和5年(2023)12月に完了しています(阿蘇神社公式サイト)。
令和2年(2020)には新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、神幸行列の実施が見送られた年もありましたが、その後は段階的に規模を戻し、令和5年(2023)頃から通常規模での開催が再開されています。
令和8年(2026)についても、7月28日に御田植神幸式を実施する旨が阿蘇神社公式サイトで案内されています(2026年7月2日付おしらせ)。
よくある質問
Q. おんだ祭りとはどのような祭りですか? A. 阿蘇神社(あそじんじゃ)や国造神社(くにつくりじんじゃ)で毎年7月に行われる農耕神事で、正式名称を御田植神幸式(おたうえしんこうしき)といいます。神々が神輿に乗って青田を巡り、稲の生育具合を見て豊作を祈願する祭事です。
Q. おんだ祭りはいつ、どこで行われますか? A. 国造神社では7月26日、阿蘇神社では7月28日に行われます。両社とも神事の内容はほぼ同じですが、阿蘇神社の方が神輿の数(4基)や行列の規模(約200人)が大きく、国造神社は神輿1基、宇奈利6名と小規模です。
Q. 「田植え」という名前なのに、実際には田植えをしないのはなぜですか? A. おんだ祭りが行われる7月下旬には稲がすでに生育しているため、実際の田植え作業は行いません。名称は、神々が稲の生育を見て回る神幸の様子を田植えに見立てたことに由来すると考えられています。
Q. おんだ祭りは国の重要文化財に指定されていますか? A. おんだ祭り単独ではなく、阿蘇神社・国造神社で年間を通じて行われる一連の農耕祭事「阿蘇の農耕祭事」として、昭和57年(1982)1月14日に国指定重要無形民俗文化財に指定されています(阿蘇市公式サイト)。
関連項目
参考文献
- 阿蘇市公式サイト「阿蘇の農耕祭事」
- 阿蘇市公式サイト「年間行事・イベント・祭り」
- 阿蘇神社公式サイト「御田祭」
- 日本考古学協会ブログ「阿蘇神社 御田植神幸祭(おんだ祭り)」
- 文化遺産オンライン「阿蘇の御田植」
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関連語句 : 阿蘇の農耕祭事


