概要
阿蘇山(あそさん)測候所(そっこうじょ)とは、熊本県阿蘇市の阿蘇山中岳(なかだけ)西側の山上に置かれていた気象庁の火山観測施設です。昭和6年(1931)11月1日、熊本測候所(くまもとそっこうじょ)の支所として開設され、以来約80年にわたり阿蘇山の噴煙・地震・地殻変動などの観測にあたりましたが、平成21年(2009)10月1日に測候所としての体制は廃止されました。その後継施設である阿蘇山特別地域(とくべつちいき)気象観測所(きしょうかんそくじょ)も、平成29年(2017)12月11日をもって廃止されています。現在、阿蘇山の火山観測業務は福岡管区(かんく)気象台(きしょうだい)と阿蘇市役所内の阿蘇山火山防災連絡事務所(かざんぼうさいれんらくじむしょ)に引き継がれています。
所在地・沿革
開設の経緯
阿蘇山測候所は、昭和6年(1931)11月1日に熊本測候所の支所として開設されました。この年、県内で行われた陸軍大演習の後に予定されていた昭和天皇の阿蘇火山への登山に備えるための措置であったとされています。当時、阿蘇は国立公園の候補地であり、20万人を超える観光客のためにも火山活動の状態を観測する必要性がありました。観測地点は中岳西側の山上(露場(ろじょう)標高約1,142メートル)にあり、露場とは気象観測用の機器を屋外に設置した区画を指します。
庁舎の変遷
最初は木造であった庁舎も、昭和33年(1958)の爆発で被害を受けたため、翌昭和34年(1959)に鉄筋コンクリート造となりました。
組織の変遷(黒川基地事務所への統合)
平成10年(1998)3月からは、阿蘇山測候所の業務を当時の阿蘇町(あそまち)黒川(くろかわ)(現・阿蘇市)にある基地事務所に統合し、常時監視を行っていたとされています。この点については原記事の記述をそのまま引き継いでいますが、外部資料での裏付けが取れていません。地元資料(市史等)での確認が望まれます。
測候所の廃止と観測所への移行
その後、無人・自動観測技術の普及を背景に、全国の測候所は平成9年(1997)から平成22年(2010)にかけて順次廃止され、特別地域気象観測所へ移行しました。阿蘇山測候所もこの流れの中で平成21年(2009)10月1日に廃止され、以後は「阿蘇山特別地域気象観測所」として自動観測が行われるようになりました。しかし、火口活動の影響で観測が困難となったため、平成27年(2015)1月に代替の臨時観測所が設置され、平成29年(2017)12月11日14時、この臨時観測所が常設の「南阿蘇地域気象観測所」に切り替わると同時に、阿蘇山特別地域気象観測所は廃止されました(福岡管区気象台、2017年11月7日発表)。
観測業務・機能
測候所時代には、各種気象要素の観測はもとより、噴煙(ふんえん)の遠望観測や火口の現地観測をはじめ、地震計による火口周辺の地震や微動(びどう)の観測・監視などが行われていました。阿蘇山上の観測所は標高1,000メートルを越える地点にあるため、戦時中には九州の航空天気図作成の要としても重要な役割を果たしたとされています。また、噴火があれば噴出物の分布・量・被害の調査なども行われ、結果が公表されていました。
火山情報の発表体系
測候所時代には、火山活動が活発になると「緊急火山情報」「臨時火山情報」「火山観測情報」の三種類の火山情報が発表されていました。この三区分の呼称は現在は用いられておらず、平成19年(2007)12月の噴火警戒レベル制度導入以降は「噴火警報・予報」「噴火速報」「火山の状況に関する解説情報」「火山活動解説資料」等の体系に再編されています(気象庁「阿蘇山火山防災連絡事務所」)。
現在の観測体制
気象庁は、阿蘇山における火山業務を地元自治体と連携して行う目的で、平成20年(2008)4月1日、阿蘇市役所内に阿蘇山火山防災連絡事務所を開設しました。連絡事務所には福岡管区気象台地域火山監視・警報センターの職員が2名体制で勤務しており、火山活動状況の自治体・住民・関係機関への解説業務、阿蘇山の現地調査、火山観測機器の保守・点検などを担っています(所在地:〒869-2695 熊本県阿蘇市一の宮町宮地504番地1 阿蘇市役所北側別館内、2026年7月現在)。
現在の火山観測データや噴火警戒レベルは、気象庁「阿蘇山の火山観測データ」ページで公開されています。
よくある質問
Q. 阿蘇山測候所は現在も存在しますか? A. 存在しません。平成21年(2009)10月1日に測候所としての体制が廃止され、その後継の阿蘇山特別地域気象観測所も平成29年(2017)12月11日に廃止されました。
Q. 測候所が担っていた観測業務は今どこが引き継いでいますか? A. 福岡管区気象台と、阿蘇市役所内に設置された阿蘇山火山防災連絡事務所が引き継いでいます。気象観測は南阿蘇地域気象観測所が担っています。
Q. 阿蘇山測候所はなぜ昭和6年に設置されたのですか? A. 同年に予定されていた昭和天皇の阿蘇火山登山への備えと、国立公園候補地としての観光客のための火山観測の必要性が背景にあったとされています。
Q. 阿蘇山の最新の火山情報はどこで確認できますか? A. 気象庁が発表する「噴火警報・予報」「火山の状況に関する解説情報」等が、気象庁ウェブサイトの火山登山者向け情報提供ページで確認できます。
関連項目
- 阿蘇山
- 黒川
- 阿蘇火山博物館
- 阿蘇ジオパーク
参考文献
- 気象庁「阿蘇山火山防災連絡事務所」(https://www.data.jma.go.jp/vois/data/fukuoka/rovdm/Asosan_rovdm/Asosan_rovdm.html)
- 気象庁「阿蘇山の火山観測データ」(https://www.data.jma.go.jp/vois/data/obs/kansoku/open-data.php?id=503)
- 福岡管区気象台「南阿蘇地域気象観測所の常設化について」2017年11月7日
- 熊本地方気象台「熊本地方気象台の組織、沿革」