南阿蘇鉄道(みなみあそてつどう)株式会社とは、熊本県阿蘇郡の南阿蘇村(みなみあそむら)・高森町(たかもりまち)を結ぶ高森線(たかもりせん)を運営する第三セクター鉄道会社です。本社は熊本県阿蘇郡高森町に置かれています。路線は阿蘇カルデラ内の南郷谷(みなみごうだに)を走る立野(たての)駅-高森駅間の17.7kmで、地元では「南鉄(なんてつ)」の愛称で親しまれています。トロッコ列車「ゆうすげ号」や、令和2年(2020)3月まで日本一長い駅名であった駅を有することでも知られています。
会社概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 設立 | 1985年(昭和60年)4月1日 |
| 高森線 承継開業 | 1986年(昭和61年)4月1日 |
| 本社所在地 | 熊本県阿蘇郡高森町大字高森 |
| 路線 | 高森線(立野駅 - 高森駅、17.7km) |
| 軌間 | 1,067mm、全線単線・非電化 |
| 主要株主 | 南阿蘇村、高森町、山都町、西原村、大津町(沿線自治体による出資) |
沿革
国鉄高森線の時代
高森線は、JR豊肥本線(ほうひほんせん)の前身にあたる宮地線(みやじせん)の支線として、1928年(昭和3年)2月12日に立野駅-高森駅間で開業しました。この開業と同時に、長陽(ちょうよう)駅・阿蘇下田(あそしもだ)駅・中松(なかまつ)駅・阿蘇白川(あそしらかわ)駅・高森駅が新設されています。同年12月2日、豊肥本線の全通に伴い、立野駅-高森駅間は高森線として分離されました。
高森線は、当初は高森駅からさらに宮崎県側の高千穂(たかちほ)方面まで延伸し、九州を東西に横断する鉄道路線となる計画の一部でした。しかし、トンネル掘削中の異常出水事故により工事は中断し、1980年(昭和55年)に建設は凍結されています。
1981年(昭和56年)9月1日、高森線は国鉄再建法に基づく第1次特定地方交通線として廃止承認を受け、1984年(昭和59年)11月17日に第三セクター鉄道への転換が決定しました。
南阿蘇鉄道としての開業
1985年(昭和60年)4月1日、南阿蘇村・高森町など沿線自治体の出資により南阿蘇鉄道株式会社が設立されました。翌1986年(昭和61年)4月1日、国鉄高森線を承継して開業しています。同年7月26日には、トロッコ列車「ゆうすげ号」の運行を開始しました。
1992年(平成4年)4月1日には、見晴台(みはらしだい)駅-高森駅間に南阿蘇水の生まれる里白水高原(みなみあそみずのうまれるさとはくすいこうげん)駅が開業しました。読み仮名22文字の駅名は、開業から2020年(令和2年)3月に京都府の駅(等持院・立命館大学衣笠キャンパス前駅)に記録が塗り替えられるまで、日本一長い駅名として知られていました。
2008年(平成20年)3月20日から22日にかけては、線路と道路の両方を走行できる車両「デュアル・モード・ビークル(DMV)」の走行実証実験が沿線周辺地域で実施されています。
平成28年(2016)熊本地震による被災と復旧
2016年(平成28年)4月14日の前震により、高森線は全線で運転を見合わせました。同月16日の本震では、立野駅-長陽駅間のトンネル内壁のひび割れや橋梁の変状など、甚大な被害を受けています。
被害の比較的軽微だった中松駅-高森駅間は、同年7月31日に運転を再開しました。一方、被害の大きかった立野駅-中松駅間は長期の不通が続き、2018年(平成30年)3月3日には、被災した犀角山(さいかくざん)トンネルを開削(かいさく)する形での復旧工事(犀角山工区)が着工しました。
2023年(令和5年)3月10日、南阿蘇鉄道は全線再開に向けて国土交通省より「鉄道事業再構築実施計画」の認定を受けました。同年4月1日には上下分離方式(じょうげぶんりほうしき)に移行し、新設された一般社団法人南阿蘇鉄道管理機構が鉄道施設を保有する第三種鉄道事業者となり、南阿蘇鉄道は旅客運送を担う第二種鉄道事業者となっています。
同年7月15日、立野駅-中松駅間の運転が再開し、7年3か月ぶりに全線での運転再開が実現しました。同日には、一部列車がJR豊肥本線の肥後大津(ひごおおづ)駅まで乗り入れる直通運転も始まっています(熊本県観光サイト「もっと、もーっと!くまもっと。」)。また、震災による温泉施設の被害で営業を断念していた阿蘇下田城ふれあい温泉駅は、同日付で阿蘇下田城(あそしもだじょう)駅に改称されました。
令和8年(2026)熊本地震と運行再開
2026年7月28日に発生した令和8年熊本地震により、南阿蘇鉄道は運休となりました。施設点検を経て、同年7月30日には運転を再開しています。2016年の熊本地震では全線復旧までに7年3か月を要しましたが、今回は発災から3日目という早さでの再開となりました(阿蘇ペディア「令和8年熊本地震」)。南阿蘇鉄道は、7月31日までに予約されていたトロッコ列車およびサニー号トレインの予約(乗車日が2026年7月28日から8月30日までのもの)について、無手数料での払い戻しに対応しています。
トロッコ列車「ゆうすげ号」
「ゆうすげ号」は、1986年(昭和61年)の開業当初から運行されている観光列車です。窓のない開放的な客車を機関車が牽引する構造で、阿蘇の高原の空気を感じながら南郷谷の車窓を楽しめる列車として親しまれています。牽引機関車には北陸重機工業製のDB16形が使用されています。
見晴台駅と南阿蘇水の生まれる里白水高原駅
見晴台駅は南阿蘇村の高台に位置し、阿蘇五岳(あそごがく)を望む展望地として知られています。隣接する南阿蘇水の生まれる里白水高原駅は、名称に沿線の白水(はくすい)地区における豊かな湧水(ゆうすい)を織り込んだ駅名です。前述のとおり、1992年(平成4年)の開業から2020年(令和2年)3月までの間、読み仮名の文字数において日本一長い駅名とされていました。
立野駅とスイッチバック
高森線の起点である立野駅は、JR豊肥本線との接続駅でもあります。立野駅は阿蘇外輪山(がいりんざん)が一箇所だけ低く途切れた地点にあり、豊肥本線はこの駅でスイッチバックにより急勾配を克服してカルデラ内へ入りますが、高森線の列車はこのスイッチバック区間を経由しません(阿蘇ペディア「スイッチバック」)。
利用情報(2026年8月現在)
- 令和8年熊本地震後、南阿蘇鉄道は2026年7月30日以降、運転を再開しています。
- 最新の運行状況・時刻表・料金については、南阿蘇鉄道公式サイトで確認することが推奨されます。
- トロッコ列車「ゆうすげ号」の運行期間・運行日は季節により変動するため、利用にあたっては事前の確認が必要です。
よくある質問
Q. 南阿蘇鉄道とはどのような鉄道ですか? A. 熊本県阿蘇郡の南阿蘇村・高森町を結ぶ高森線を運営する第三セクター鉄道会社です。路線は阿蘇カルデラ内を走る立野駅-高森駅間の17.7kmで、「南鉄」の愛称で親しまれています。
Q. いつ全線で運転を再開しましたか? A. 平成28年(2016)熊本地震で被災した後、2023年(令和5年)7月15日に立野駅-中松駅間の運転が再開し、7年3か月ぶりに全線での運転再開が実現しました。
Q. 令和8年熊本地震の影響はどうなっていますか? A. 2026年7月28日の発災により運休しましたが、施設点検を経て同年7月30日に運転を再開しています。2016年の熊本地震では復旧に7年以上を要しましたが、今回は発災3日目での再開となりました。
Q. 「ゆうすげ号」とはどのような列車ですか? A. 1986年(昭和61年)の開業当初から運行されているトロッコ列車です。窓のない開放的な客車が特徴の観光列車です。
関連項目
参考文献
- 南阿蘇鉄道株式会社公式サイト(mt-torokko.com)
- 国土交通省九州運輸局「南阿蘇鉄道の鉄道事業再構築実施計画の概要」
- 熊本県観光サイト「もっと、もーっと!くまもっと。」南阿蘇鉄道紹介ページ
- 阿蘇ペディア「令和8年熊本地震」
- 阿蘇ペディア「豊肥本線」
- 阿蘇ペディア「スイッチバック」
- 阿蘇ペディア「立野鉄橋」
- Wikipedia日本語版「南阿蘇鉄道」「南阿蘇鉄道高森線」