概要
コカマキリ(Statilia maculata)とは、カマキリ目(もく)カマキリ科(か)に分類される小型のカマキリです。前脚(鎌(かま))の内側にある白と黒(または藍色)のはっきりとした斑紋(はんもん)が最大の特徴で、この模様によって他種と容易に区別できます。本州・四国・九州に分布し、阿蘇地域では草原や林縁で普通に見られる種です。
データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 和名 | コカマキリ(小蟷螂) |
| 学名 | Statilia maculata |
| 分類 | カマキリ目カマキリ科コカマキリ属 |
| 体長 | 40〜65mm程度(オスよりメスがやや大きい) |
| 分布 | 本州・四国・九州(沖縄を含む分布域については資料により記載が分かれる) |
| 阿蘇地域での生息環境 | 草原・林縁・河川敷・畑地 |
形態・特徴
体色は肌色から焦茶色(こげちゃいろ)の個体がほとんどですが、まれに緑色の個体も出現します。枯れ葉に似た保護色(ほごしょく)で、地表での生活に適応しています。前脚の鎌の内側に、黒や藍色に縁取られた白い斑紋があるのが本種最大の識別点で、他のカマキリ類との判別に用いられます。オオカマキリやハラビロカマキリと比べて小柄で、俊敏な動きを見せます。
生態
生活史(卵→幼虫→成虫)
カマキリ類は蛹(さなぎ)の期間を持たない不完全変態(ふかんぜんへんたい)の昆虫です。卵嚢(らんのう)は他のカマキリ類と比べて小さく細長い形状で、草の茎・木の根元・石の裏・壁面など目立たない場所に産みつけられます。卵の状態で冬を越し、春に幼虫が孵化(ふか)して脱皮を繰り返しながら成長し、晩夏から秋(おおむね8〜11月)にかけて成虫として出現します。年1回の発生です。
食性
小型の昆虫を捕食する肉食性(にくしょくせい)です。捕鎌状(ほれんじょう)の前脚でバッタやチョウなどの獲物を捕らえます。
行動・習性
主に地上を徘徊(はいかい)する性質が強く、他のカマキリ類のように樹上高くまで登ることは少ない地上徘徊性(ちじょうはいかいせい)の種です。危険が迫ると、素早く逃げるか、体を縮めて死んだふりをすることが知られており、地表を主な活動場所とする小型種ならではの生存戦略と考えられています。
阿蘇との関わり
阿蘇の草原における生息
阿蘇の草原は約600種の植物が生育し、熊本県産のチョウ類約117種のうち109種が確認されるなど、昆虫相の豊かさで知られています(阿蘇草原再生協議会)。コカマキリは、この豊かな草原・林縁環境に生息する肉食性昆虫の一種として、バッタ類など他の昆虫の個体数を調整する捕食者としての役割を担っていると考えられます。
阿蘇の草原と野焼き
阿蘇の草原は野焼き(のやき)によって毎年更新されています。野焼きの炎は短時間で燃え尽きて移動するため、ススキ群落では地表温度が400度に達しても、地下1cmより深い場所ではほとんど温度が上昇しないとされ、地中で越冬する昆虫や小動物への影響は少ないと報告されています(阿蘇草原再生協議会・世界農業遺産関連資料)。ただし、コカマキリの卵嚢は草の茎など地上部に産みつけられることもあるため、地中で越冬する昆虫と同等に影響を免れるかどうかは、種ごとの産卵場所によって異なると考えられます。
観察情報
秋(8〜11月)に草原や林縁を注意深く歩くと、地表付近を徘徊する成虫を観察できる場合があります。前脚の鎌の内側にある白黒の斑紋を確認できれば、他のカマキリ類との識別は容易です。保護色のため見つけにくく、動きを止めていると枯れ葉と見分けがつきにくい点に留意が必要です。
熊本県レッドリスト上の位置づけ
『レッドリストくまもと2024』のカマキリ目における選定対象はウスバカマキリ(情報不足)1種のみであり、コカマキリはリストに掲載されていません。広く分布し個体数も安定していることから、現時点で県レベルでの保護上の懸念は示されていないと考えられます。
よくある質問
Q. コカマキリを他のカマキリと見分ける方法は? A. 前脚(鎌)の内側にある白と黒(または藍色)のはっきりとした斑紋が最大の識別点です。体長も40〜65mm程度とオオカマキリなどより小柄です。
Q. コカマキリはどこで見られますか? A. 草原・林縁・河川敷・畑地など幅広い環境に生息し、住宅地でも見られます。阿蘇地域では草原や林縁で普通に観察できます。
Q. コカマキリは危険を感じるとどうしますか? A. 素早く逃げるか、体を縮めて死んだふりをすることが知られています。これは地上を主な活動場所とする小型種ならではの習性と考えられています。
Q. コカマキリは絶滅の心配がありますか? A. 『レッドリストくまもと2024』には掲載されておらず、現時点で県内における生息状況は安定していると考えられます。
関連項目
参考文献
- 『レッドリストくまもと2024-熊本県の絶滅のおそれのある野生動植物-』(熊本県、令和6年〈2024〉10月)
- 阿蘇草原再生協議会「阿蘇草原再生全体構想〈第3期〉」
- 世界農業遺産「阿蘇の草原の維持と持続的農業」関連資料
- 各種昆虫図鑑・観察記録サイト(形態・生活史の一般的知見)