概要
九州(きゅうしゅう)自然歩道(しぜんほどう)とは、環境省(かんきょうしょう)の長距離自然歩道構想に基づいて整備された、九州7県を一周する長距離自然歩道です。愛称は「やまびこさん」と呼ばれています。総延長は約3,000kmに及び、九州7県にある国立公園4ヶ所、国定公園4ヶ所、県立自然公園30ヶ所を経由します。熊本県内では557kmの区間があり、そのうち阿蘇地域を通るコースでは、阿蘇のカルデラ景観や外輪山の稜線、阿蘇神社(あそじんじゃ)や通潤橋(つうじゅんきょう)などの史跡・名勝を歩いて巡ることができます。
沿革
九州自然歩道は、環境庁(現・環境省)が全国に展開した長距離自然歩道構想の一つとして計画されました。昭和51年(1976)度から九州各県が国の補助を得て整備を進め、昭和55年(1980)に全線が開通しました。整備にあたっては、山岳・高原・湖沼等の自然景観に加え、史跡・文化財を訪ね歩くことができるよう、既存の登山道・生活道・林道等を活用してルートが設定されました。
開通後も各県・各自治体によって維持管理が続けられていますが、道の老朽化や自然災害による被災箇所も生じており、令和8年(2026)現在も一部区間で通行規制が続いています(詳細は「利用にあたっての注意」を参照)。
熊本県内のコース概要
熊本県内の九州自然歩道は総延長557kmで、県(自然保護課)が9つのモデルコースを設定し、パンフレットを作成・配布しています。
| No. | コース名 | 区間 | 距離 |
|---|---|---|---|
| 1 | 南外輪探勝コース | 山都町御所~高森町高森 | 36.0km |
| 2 | 阿蘇探勝コース | 高森町高森~阿蘇市一の宮町宮地 | 18.0km |
| 3 | 菊池渓谷探勝コース | 菊池市原~阿蘇市内牧 | 15.5km |
| 4 | 山鹿日輪寺コース | 山鹿市鹿本町来民~山鹿市山鹿 | 17.0km |
| 5 | 小岱山探勝コース | 南関町上坂下~玉名市立願寺 | 12.0km |
| 6 | 田原坂二の岳コース | 玉東町木葉~熊本市河内町野出 | 21.0km |
| 7 | 金峰山探勝コース | 熊本市河内町野出~熊本市島崎 | 16.2km |
| 8 | 三角岳登山コース | 宇城市三角町大田尾~宇城市三角町波多 | 8.0km |
| 9 | 観海アルプスコース | 上天草市松島町阿村~上天草市姫戸町姫浦 | 12.0km |
このうち、阿蘇地域を直接通るのは1〜3のコースです。なお、令和3年度(2021年度)には人吉球磨(ひとよしくま)地域に、日本遺産「人吉球磨」の構成文化財を巡る新ルートが別途設定されています
阿蘇地域を通る主なコース
南外輪探勝コース(山都町御所~高森町高森)
矢部高校を起点とし、「石橋の町」として知られる山都町(やまとちょう)から南阿蘇村・高森町へと、阿蘇の南外輪山の稜線を歩くコースです。距離は36.0kmで、駒返峠(こまがえしとうげ)・天神峠・清水峠・高森峠・黒岩峠を経て休暇村南阿蘇に至ります。全コースを歩く場合は1泊2日、日帰りの場合は稲生野~清水峠、高森峠~休暇村南阿蘇の区間が便利とされています。天神峠~清水峠間の「高千穂野(たかぢょうや)」と呼ばれる区間は急勾配で、健脚向きの区間です。
沿線には、国指定重要文化財の通潤橋(つうじゅんきょう)、奈良時代開基と伝わる清水寺、阿蘇開拓の祖・健磐龍命(たけいわたつのみこと)の住居跡と伝えられる高森阿蘇神社、高森惟直(たかもりこれなお)の城跡である高森城跡など、史跡が多く点在します。落差50mの五老ヶ滝(ごろうがたき)をはじめとする滝群も見どころです。
阿蘇探勝コース(高森町高森~阿蘇市一の宮町宮地)
休暇村南阿蘇から根子岳(ねこだけ)を望みながら鍋の平・日ノ尾峠を経て、ミヤマキリシマの群生地である仙酔峡(せんすいきょう)へと至る、距離18.0kmのコースです。仙酔峡は阿蘇中岳への東登山口にもなっており、根子岳・高岳への登山口も歩道の途中から分岐しています。
沿道の草原では、春はハルリンドウやキスミレ、夏はホタルブクロやアソノコギリソウ、秋はハギやリンドウなど、四季を通じて阿蘇の野草を観察できます。終点付近には、阿蘇開拓の祖・健磐龍命(たけいわたつのみこと)を主神として12柱の神々を祀る阿蘇神社(あそじんじゃ)、その本宮とされる国造神社(こくぞうじんじゃ)があります。
菊池渓谷探勝コース(菊池市原~阿蘇市内牧)
阿蘇外輪山の北西部に位置する菊池渓谷(きくちけいこく)を通り、阿蘇市内牧(うちまき)へと至る距離15.5kmのコースです。菊池渓谷は、外輪山からの伏流水が大小の瀬や淵、滝をつくり出す標高500〜800mの渓谷で、「自然休養林」に指定されています。掛幕の滝から広河原までの約1kmは、特に多くの滝と原生林が連なる区間です。
沿線には、県指定文化財の石造眼鏡橋(永山橋・立門橋)や、南北朝時代の忠臣・菊池氏を祀る菊池神社もあります。
利用にあたっての注意
九州自然歩道は山岳部を含むコースが多く、台風・大雨等の後は落石・倒木・土砂崩れの恐れがあるため、通行前の情報確認が推奨されています。環境省九州地方環境事務所が運営する「九州自然歩道ポータル」では、区間ごとの通行規制情報が随時更新されています。
熊本県内では、平成28年(2016)熊本地震による被害の影響もあり、阿蘇〜菊池間の一部区間について通行規制が継続していることが同ポータルの緊急情報として案内されています。区間・解除時期の詳細は同ポータルおよび熊本県自然保護課への事前確認が必要です。マムシやスズメバチなど山地特有の危険な生物への注意も呼びかけられています。
よくある質問
Q. 九州自然歩道の愛称は何ですか? A. 「やまびこさん」という愛称で親しまれています。
Q. 熊本県内で阿蘇地域を通るコースはどれですか? A. 「南外輪探勝コース」「阿蘇探勝コース」「菊池渓谷探勝コース」の3コースが阿蘇地域を通っています。
Q. いつ整備されたのですか? A. 昭和51年(1976)度から整備が始まり、昭和55年(1980)に全線開通しました。
Q. 歩く前に確認すべきことはありますか? A. 環境省「九州自然歩道ポータル」で最新の通行規制情報を確認することが推奨されています。熊本県内では阿蘇〜菊池間の一部区間で通行規制が続いています(令和8年(2026)時点)。
関連項目
- 阿蘇神社
- 国造神社
- 仙酔峡
- 阿蘇五岳
- 通潤橋
- 阿蘇くじゅう国立公園