レッドリストくまもと2024(RL2024)とは、熊本県が令和6年(2024年)10月に公表した、県内に生育・生息する野生動植物のうち絶滅のおそれがある種をカテゴリー別にまとめた公的資料です。正式名称は「レッドリストくまもと2024-熊本県の絶滅のおそれのある野生動植物-」で、平成10年(1998年)の初版発刊以来6回目の公表にあたります。熊本県環境生活部自然保護課が所管し、環境アセスメントの基礎資料や県民への自然環境理解の啓発資料として活用されています。

沿革
熊本県では、希少植物の盗掘等による減少を受けて平成元年(1989年)に検討委員会を設置し、平成3年(1991年)4月には全国に先駆けて「熊本県希少野生動植物の保護に関する条例」を施行しました。同年、熊本県希少野生動植物検討委員会が発足し、以後およそ5年ごとの改訂を重ねています。
| 公表年 | 名称 | 略称 |
|---|---|---|
| 平成10年(1998)3月 | 熊本県の保護上重要な野生動植物 レッドデータブックくまもと | RDB1998 |
| 平成16年(2004)3月 | 熊本県の保護上重要な野生生物リスト レッドリストくまもと2004 | RL2004 |
| 平成21年(2009)3月 | 改訂・熊本県の保護上重要な野生動植物 レッドデータブックくまもと2009 | RDB2009 |
| 平成26年(2014)7月 | 熊本県の保護上重要な野生動植物 レッドリストくまもと2014 | RL2014 |
| 令和元年(2019)12月 | レッドデータブックくまもと2019-熊本県の絶滅のおそれのある野生動植物- | RDB2019 |
| 令和6年(2024)10月 | レッドリストくまもと2024-熊本県の絶滅のおそれのある野生動植物- | RL2024 |
RL2024は、RDB2019発刊後の令和元年度(2019年度)から令和5年度(2023年度)にかけて実施された調査結果を取りまとめたものです。
調査体制とカテゴリーの定義
調査主体は熊本県希少野生動植物検討委員会で、植物・藻類・哺乳類・鳥類・爬虫類/両生類・淡水魚類・昆虫類・クモ/多足類・陸産/淡水産貝類・淡水産無脊椎動物・海洋動物の11分科会から構成され、各分科会に検討委員と調査員が配置されています。カテゴリー区分は環境省の基準に準じつつ、定性的・定量的要件は県独自に設定されています。
| カテゴリー | 略号 | 定義 |
|---|---|---|
| 絶滅 | EX | 本県ではすでに絶滅したと考えられる種 |
| 野生絶滅 | EW | 飼育・栽培下でのみ存続している種 |
| 絶滅危惧IA類 | CR | 深刻な絶滅の危機に瀕している種 |
| 絶滅危惧IB類 | EN | 絶滅の危機に瀕している種 |
| 絶滅危惧Ⅱ類 | VU | 絶滅の危険が増大している種 |
| 準絶滅危惧 | NT | 存続基盤が脆弱な種 |
| 情報不足 | DD | 評価するだけの情報が不足している種 |
| 絶滅のおそれのある地域個体群 | LP | 地域的に孤立している個体群で、絶滅のおそれが高いもの |
阿蘇地域との関わり
調査史と最初の指定種
平成3年度(1991年度)から5年間続いた県内全域の希少野生動植物調査のうち、阿蘇・県北地域は平成6年度(1994年度)に調査対象となり、平成7年(1995年)3月に「阿蘇・県北地域における希少野生動植物の実情と保護方策 調査報告書」として取りまとめられました。
さらに、保護条例に基づく最初の指定は阿蘇地域と直接結びついています。平成3年(1991年)11月、ハナシノブ、オオルリシジミなど5種が「特定希少野生動植物」に指定されると同時に、阿蘇地域内の3箇所が「特定希少野生動植物保護区」に指定されました。これは県の希少種保護制度における最初の指定事例です。
草原の希少種と管理形態の変化
RL2024では、阿蘇地域の草原植物相について詳しい言及があります。阿蘇の草原は伝統的に「野焼き+放牧」または「野焼き+採草」の管理形態で維持されてきましたが、近年は放牧・採草が停止し、野焼きのみで管理される草原の面積が拡大しています。その結果、ススキなど大型多年生草本の生育量が増加し、中型以下の草原性植物が生存の脅威にさらされていると指摘されています。また、大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設も、希少種への影響が懸念される新たな要因として挙げられています。
こうした環境変化は動物種のカテゴリー見直しにも表れています。阿蘇地方を主な生息域とするゴマシジミ中国地方・九州亜種は、放牧・採草の停止により食草のワレモコウが減少していることなどから、RL2024で絶滅危惧IB類(EN)から絶滅危惧IA類(CR)に引き上げられました。同様に、昭和59年(1984年)に阿蘇北外輪山で生息が初めて確認されたオオジシギも、絶滅危惧IB類(EN)から絶滅危惧IA類(CR)に引き上げられています。
阿蘇地域内の主な群落・生息地
RL2024には、阿蘇地域内の複数の群落・生息地(ハビタット)が重要度の高いものとして掲載されています。阿蘇波野原の山地草原、阿蘇端辺原野の山地草原・山地湿原、阿蘇火山山頂の植物群落、根子岳の自然林(阿蘇市・高森町)などが該当します。鳥類のハビタットとしては阿蘇北外輪山・端辺原野(オオジシギ、コヨシキリ、コジュリンの生息地)、昆虫類のハビタットとしては高森町の鍋の平(オオルリシジミの生息地)が挙げられています。
なお、ハナシノブは本書でも絶滅危惧IA類(CR)に位置づけられており、環境省レッドリストでも同じく絶滅危惧IA類(CR)です。
指定希少野生動植物制度との関係
現行の「熊本県野生動植物の多様性の保全に関する条例」(平成16年(2004年)12月に全面改定)に基づき、令和6年(2024年)時点で指定希少野生動植物49種、生息地等保護区14箇所が指定されており、区域内での捕獲・採取・殺傷・損傷や開発行為が規制されています。RL2024に掲載された種のうち特に絶滅のおそれが高いものが、この指定制度による保護対象種選定の基礎資料となっています。
現在の意義と活用
RL2024は、今後の自然環境保全に関する基礎資料とすることを目的として公表されました。県民への啓発資料であると同時に、各種事業における環境アセスメントの基礎資料としても活用されています。AsoPediaにおいても、阿蘇地域の動植物記事における保全状況の出典として本書を参照しています。
よくある質問
Q. レッドリストくまもと2024は何回目の公表ですか? A. 平成10年(1998年)の初版「レッドデータブックくまもと」以来、6回目の公表です。
Q. どこで閲覧できますか? A. 熊本県ホームページの自然保護課のページでPDF版・Excel版が公開されています(2026年7月時点)。
Q. カテゴリーはいくつありますか? A. 絶滅(EX)、野生絶滅(EW)、絶滅危惧IA類(CR)、絶滅危惧IB類(EN)、絶滅危惧Ⅱ類(VU)、準絶滅危惧(NT)、情報不足(DD)、絶滅のおそれのある地域個体群(LP)の8区分です。
Q. 阿蘇地域は保護制度の中でどのような位置づけですか? A. 平成3年(1991年)の制度発足時、最初に指定された特定希少野生動植物保護区3箇所はいずれも阿蘇地域内にあり、県の希少種保護制度の出発点となった地域です。
関連項目
- ハナシノブ
- オオルリシジミ
- 野焼き
- 牧野
- 指定希少野生動植物
参考文献
- 熊本県『レッドリストくまもと2024-熊本県の絶滅のおそれのある野生動植物-』(令和6年(2024年)10月発行)
- 熊本県ホームページ「レッドリストくまもと2024-熊本県の絶滅のおそれのある野生動植物-の公表」(https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/52/2540.html、2026年7月閲覧)