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阿蘇の自然

キスミレ

スミレ(黄菫(きすみれ)、学名:Viola orientalis)とは、スミレスミレ属の多年草で、数少ない黄色い花を咲かせるスミレの一種です。阿蘇の草原では野焼き(のやき)の直後、他の植物に先駆けて一斉に開花することから、阿蘇の春の訪れを告げる植物として知られています。

データ

和名 キスミレ(黄菫)
学名 Viola orientalis (Maxim.) W.Becker
別名 イチゲキスミレ(一華黄菫)
分類 スミレ科 スミレ属
花期 3月~5月
国内分布 本州・九州
熊本県内分布 阿蘇地域
熊本県レッドリスト 準絶滅危惧(NT)・要注目種(AN)(『レッドリストくまもと2024』)
環境省レッドリスト 指定なし

形態・特徴

本種は草丈10~15cm程度の小型の多年草です。茎は細く直立し、上方に3~4枚の葉をつけますが、下部には葉がありません。葉は柄が短く、心形(しんけい)で丸みを帯び、先端はやや鈍く尖り、長さは2.5~4cm程度です。

茎の先端に直径2cm前後の花を一輪だけつけます。この一茎一花(いっけいいっか)の性質から、イチゲキスミレ(一華黄菫)という別名も持っています。花は唇弁(しんべん)と側弁(そくべん)に褐色の筋が入り、唇弁は他の花弁よりも小さいことが特徴です。名前の通り、スミレ属の中では珍しい黄色の花を咲かせます。

生態

開花習性

本種は野焼き後の黒く焼けた草原にいち早く芽吹き、他の草原植物に先駆けて開花する「スプリング・エフェメラル」的な性質を持つ植物として紹介されています(環境省九州環境局)。野焼きによって日射を遮る枯れ草がなくなることが、早期の開花を促していると考えられます。

種子散布

スミレ属の多くの種と同様に、本種の種子にはエライオソームと呼ばれる養分に富んだ付属体がついており、これを目当てにアリが種子を巣穴まで運ぶことで、種子が広い範囲に散布されると考えられています(アリ散布)。

阿蘇との関わり

スミレは大陸系の植物とされ、国内では分布そのものが限られています。阿蘇山周辺は本種のまとまった生育地の一つとされていますが、それでも生育範囲は決して広くありません。

阿蘇の草原は、野焼き放牧採草という人の手による管理が一万年以上続けられてきたことで維持されてきました(草原景観生物・生態系)。本種のように野焼き直後の裸地状態を好む植物は、この管理が途絶えると大型多年草に覆われ、生育の場を失っていきます。環境省の報告でも、野焼きが中止されれば本種のような植物は姿を消してしまうことが指摘されています。

観察情報

  • 見頃の時期:3月下旬~5月上旬
  • 観察に適した場所:野焼きが行われた直後の草原一帯
  • 見分け方:黄色い花・心形の葉・茎の先に一輪だけ花をつける点が目印です
  • 注意事項:熊本県レッドリストに掲載された希少種のため、採取や踏み荒らしは避けてください

熊本県レッドリスト上の位置づけ

スミレは『レッドリストくまもと2024』(熊本県、令和6年(2024)10月)において、準絶滅危惧(NT)および要注目種(AN)に選定されています。環境省の全国版レッドリスト(2020年版)には指定がなく、熊本県内での希少性が特に高いことを示しています。

阿蘇地域以外の平地の草原ではオキナグサやノヒメユリなどとともに管理放棄が進んでおり、本種も同様に生育地の維持が課題となっています。

よくある質問

Q. キスミレはなぜ「キ」という名前がついているのですか? A. スミレ属の花は紫や白が多いなか、本種は珍しく黄色い花を咲かせることから「黄(キ)スミレ」と名付けられました。

Q. キスミレはいつ、どこで見られますか? A. 野焼き後の3月下旬から5月上旬にかけて、阿蘇の草原で見ることができます。特に野焼き直後の裸地状態の草原に多く見られます。

Q. キスミレは採取してもよいですか? A. 熊本県のレッドリストで準絶滅危惧(NT)に指定されている希少種のため、採取は避け、観察のみにとどめることが望まれます。

関連項目

参考文献

更新日: 2026-08-31 (月) 07:06:36 (19d)