概要
杵島岳(きしまだけ)とは、熊本県阿蘇市にある標高1,326mの火山で、阿蘇五岳(あそごがく)の一峰(いっぽう)です。草千里ヶ浜(くさせんりがはま)の北側に位置し、なだらかな円錐形(えんすいけい)の山容(さんよう)と、山頂に残る円形の火口跡を特徴とします。
杵島岳は約3,500年前に活動した比較的新しい火山とされ、浸食(しんしょく)をあまり受けていない新鮮な火山地形を残していることで知られています(阿蘇ジオパーク推進協議会)。阿蘇ジオパークの正式なジオサイトの一つに数えられ、隣接する米塚(こめづか)とともに、若い火山地形を観察できる場所とされています。
- 杵島岳の標高は1,326mです。
- 杵島岳は阿蘇五岳のうち最も西に位置します。
- 杵島岳が形成されたのは約3,500年前と考えられています。
阿蘇五岳における位置づけ
阿蘇五岳とは、阿蘇カルデラの中央に東西に連なる高岳(たかだけ)・中岳(なかだけ)・根子岳(ねこだけ)・烏帽子岳(えぼしだけ)・杵島岳の五つの火山の総称です。最高峰は高岳の1,592mで、噴煙を上げる中岳(1,506m)、鋸(のこぎり)の刃のような山容の根子岳(1,433m)、烏帽子岳(1,337m)と続き、杵島岳(1,326m)は五岳のなかで最も西側に位置します(阿蘇山上ビジターセンター)。
これら五岳の山並みは、北側の外輪山(がいりんざん)から眺めると釈迦(しゃか)が仰向けに横たわる姿に見えることから、「阿蘇の涅槃像(ねはんぞう)」と呼ばれています。
形成過程
杵島岳は、玄武岩(げんぶがん)質のマグマによって形成された火砕丘(かさいきゅう)で、一度の噴火活動でつくられた単成火山(たんせいかざん)とされています(阿蘇ジオパーク推進協議会)。火砕丘とは、火口から噴き上げられたスコリア(多孔質の黒っぽい火山噴出物)などが火口の周囲に積もってできた円錐形の丘のことです。
山頂の火口のほか、山頂の北西部および東麓(とうろく)に火口群があり、特に東麓の火口(直径約800m)の底には、小型の火口・溶岩ドーム(平頂丘)・火砕丘などが見られます。また山体の北西斜面には若い放射谷(ほうしゃこく)が多数発達しており、火山体が浸食されていく過程を知るうえでも重要とされています(阿蘇ジオパーク推進協議会)。
杵島岳の北側にある往生岳(おうじょうだけ)や、南西の米塚も同じ玄武岩質のスコリア丘で、これらの火山が活動したのは約3,000〜4,000年前と考えられています。米塚の周辺には溶岩が広く分布し、溶岩の内部が流れ抜けてできた溶岩トンネルが多く見られます。
火口地形
杵島岳の山頂には、直径約200m・深さ約50mの円形の旧火口があり、西側には爆裂火口、東斜面には「古の御池」と呼ばれる楕円形の旧噴火口(最長径約50m)が残されています。火口底は火山灰に覆われた平地となっています(阿蘇市公式サイト)。
杵島岳と北側の往生岳はいずれも山体に放射状の谷が発達しており、往生岳の山頂にも旧噴火口が東西に三つ並んでいます。両山のすそ野は七合目付近で一つになり、長く裾を引いて、牛馬が放牧される草原が広がっています。
登山・遊歩道
杵島岳は阿蘇登山の入門ルートとして知られ、山頂まで舗装された階段が整備されています。草千里駐車場東登山口(標高約1,137m)から山頂までの所要時間はおおむね登り35分・下り25分で、山頂ではお鉢巡り(火口の縁を一周する周回)も可能です(阿蘇山上ビジターセンター)。
山頂は草原に覆われ、中岳や高岳、いくつもの火口跡、米塚、北外輪山などを見渡す360度のパノラマが広がります。なだらかな山肌ではあか牛(褐毛和種)の放牧が盛んに行われ、阿蘇らしい草原の山歩きが楽しめる山として親しまれています。
なお、南麓の登山口にあたる古坊中(ふるぼうちゅう)は、かつて山岳信仰と山岳仏教が結びついて栄えた霊場跡で、多くの僧侶が修行した場所と伝えられています。
火山活動と登山時の注意
阿蘇一帯では、平成24年(2012)7月の九州北部豪雨、平成28年(2016)4月の熊本地震、同年10月の中岳の爆発的噴火などにより、斜面の崩落や土砂流出が生じてきました。杵島岳の遊歩道自体は入門ルートとして整備されていますが、隣接する中岳の噴火警戒レベルによっては、阿蘇山上一帯の道路や火口周辺で立入規制がかかる場合があります(阿蘇市公式サイト)。
阿蘇五岳一帯は四季を通じてやや冷涼で雨が多く、中央火口丘では標高1,000m以上の地点の年間平均気温が10℃以下、年間降水量は3,000mmを超えます。登山にあたっては、気象庁が発表する阿蘇山の噴火警戒レベルなど、最新の火山情報を確認することが求められます。
よくある質問
Q. 杵島岳の標高は何mですか。 A. 標高1,326mです。阿蘇五岳のなかで最も西側に位置します(阿蘇山上ビジターセンター)。
Q. 杵島岳はどのようにしてできた山ですか。 A. 約3,500年前に、玄武岩質のマグマの噴火によって形成された火砕丘(かさいきゅう)とされています。一度の活動でつくられた単成火山で、浸食をあまり受けていない新鮮な火山地形が残されています(阿蘇ジオパーク推進協議会)。
Q. 杵島岳は登れますか。初心者でも大丈夫ですか。 A. 草千里駐車場東登山口から山頂まで舗装階段が整備された入門ルートがあり、登り35分ほどで山頂に至ります。ただし隣接する中岳の火山活動によっては周辺が立入規制となる場合があるため、最新の噴火警戒レベルの確認が必要です。
Q. 山頂には何が見られますか。 A. 直径約200m・深さ約50mの円形の旧火口があり、火口の縁を一周するお鉢巡りが可能です。中岳・高岳・米塚・北外輪山などを望む360度のパノラマが広がります。
関連項目
- 阿蘇五岳
- 中岳火口
- 草千里ヶ浜
- 米塚
- 往生岳
- 古坊中
- 野焼き
参考文献
- 阿蘇ジオパーク推進協議会「杵島岳ジオサイト」阿蘇ジオパークオフィシャルサイト(http://aso-geopark.jp/geosites/geosite07.html 、2026年7月閲覧)
- 阿蘇市公式サイト「阿蘇山(阿蘇五岳と外輪山)」(https://www.city.aso.kumamoto.jp/tourism/spot/mt_aso/ 、2026年7月閲覧)
- 阿蘇山上ビジターセンター「登山情報」(https://aso-visitorcenter.com/climbing-information/ 、2026年7月閲覧)
- 気象庁「阿蘇山 火山活動の状況」